出版社内容情報
日本人はなぜ「万物」を弔うのか?
現在、人間の葬儀の簡素化が急速に進んでいる。一方で、犬や猫などのペットが手厚く葬られ、さらにはロボット、スマホなど命なきものが供養されている。この逆転現象は一体何なのか?
現役の僧侶でジャーナリストの著者が、日本各地を取材し、私たち日本人の不思議な「弔う姿」を見つめる。そこに浮かび上がってきたのは、弔う側と弔われる側との間の「ストーリー」だった。
*本書は『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる』(朝日新聞出版)を大幅に改変し、加筆したものです。
―はじめにより(抜粋)―
供養の対象物は、無限に広がっている。よく知られたところだと、人形供養や針供養、筆供養など「モノ」の供養が伝統的に続けられている。人びとが愛着を持って大切に使ってきた道具に対する感謝のこころが、「供養する」という行為に昇華されたものであろう。
だが、それだけにとどまらない。モノの供養は、メガネ、財布、パソコン、スマホ、パチンコ、車、入れ歯、郵便物……果てしなく広がる。道路や橋、太陽、月の供養なんてものも存在する。「道路の供養」には首を傾げてしまうが具体的には、鎌倉街道や道玄坂の墓などが存在する。道路を供養する目的は、どこにあるのか。さらに、天体である太陽や月がどうして弔いの対象になるというのだろう。不可解極まりない。本書では、その謎を解き明かす。
―目次より―
第1章 奇妙なモノ供養
第2章 動物を供養する
第3章 魚を供養する
第4章 昆虫を供養する
第5章 草木の供養
【著者略歴】
鵜飼秀徳(うかい・ひでのり)
作家、ジャーナリスト、浄土宗僧侶。1974年、京都・嵯峨の正覚寺に生まれる。成城大学文芸学部卒業。新聞記者・雑誌編集者を経て、2018年に独立。2021年、正覚寺住職(三十三世)。主に「宗教と社会」をテーマに取材、執筆、講演などを続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』『仏教の大東亜戦争』(ともに文春新書)、『絶滅する「墓」』(NHK出版新書)など多数。最新刊に『仏教の未来年表』(PHP新書)。大正大学招聘教授、東京農業大学・佛教大学非常勤講師。一般社団法人良いお寺研究会代表理事。