内容説明
九月九日午後 古城刑務所 第五面談室凶悪な受刑者・王国炎の口から繰り出される中国全土を震撼させた数々の重大な未解決事件の“詳細”―。デタラメとして一蹴する幹部たちだったが刑務所捜査官・羅維民は本能的にその重要性を嗅ぎ分け、事件解決に向かって動き出す―。ベストセラー大賞、金盾文学賞、中国図書賞、中国三大文学賞受賞作品。
著者等紹介
張平[ジャンピン]
1954年生まれ。中国を代表する実力派作家。中国作家協会副主席、山西省作家協会主席、中国全国政治協商会議委員。84年『姉さん』で全国優秀短編小説賞を受賞。80年代後半、ノンフィクション『法、汾西を揺るがす』『天網』の発表で、名誉毀損で訴えられるも、張平の勝利で結審。97年『選択』が優秀な長編文学に授与される茅盾文学賞を受賞。同作品は映画化され、中国国産映画としては空前の興行成績をあげる。2000年『十面埋伏』はベストセラー大賞、金盾文学賞、中国図書賞の三冠を得る。04年3月発表の『国家幹部』は最新の超大作。その他、作品多数
荒岡啓子[アラオカケイコ]
1951年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業、大阪外国語大学大学院言語社会研究科博士前期課程修了。(株)ダイエー海外部、駿台外語専門学校中国語専任講師を経て、同志社大学嘱託講師。翻訳家としても活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
53
十面埋伏という表題の意:周囲にしっかと伏兵を忍ばせておくという敵を倒す極意~外堀を埋め・・みたいな感じ。上下巻合わせ800頁。読みがいがある。英米系は駄目だけど中国翻訳は読めるのが我ながら不思議・・ダレず、コツコツ耽った。刑務所・警察組織(含む公安)政、財界、一般人(含むごろつき)の群像図。まぁ ずぶずぶぬかるみを破顔一笑で闊歩するのが悪玉 国炎。次々と場面展開する中で、どいつが善だか悪だが五里霧中。作中にも各々がそれを呟いて嘆く。上では取りあえず数人が浮上し、下巻で一気呵成のごみ掃除へ~だろう。2022/08/04
イノ
9
中国を舞台にした社会派小説。タイトルの意味は敵はありとあらゆる所に潜んでいる。 牢の中に首謀者と思われている人物がいてるが調べようとすると あちこちから歯止めがかかる。 誰がどこまでが敵なのか判らず緊張感がある。 登場人物が中国読みなのでルビがちょいちょい振ってあっても 覚えづらいが惹きこまれる。2016/12/28
星落秋風五丈原
9
本作は、様々な小説の要素を含んでいる。 1.特別待遇の王国炎 看守達の不審な尋問 などには刑務所の不当な扱いがテーマとなる事が多い「刑務所小説」の雰囲気がある。 2.王国炎の関わった事件を刑事達が調査する件は、 松本清張あたりがよく書いたミステリーもの、刑事小説の匂いがする。 3.羅維民と上層部との対立、或いは公安部と刑務所との対立との件は、高村薫らの「警察小説」や、内部抗争や組織の闇を書いた松本清張の「組織小説」とイメージが重なる。 ここに書かれているのはたった二日間の出来事。少しも間延びした所がない。2006/10/15
メイ
8
米原万里女史評本より漂流。中国本は初めて。一言で言うと熱い。中国人名とやたら長い役職を読むことを半ば放棄して読了。一人の刑務官がとある事件に疑惑をもって調べてみたら、長い芋づるのように関係者がぞろぞろと出てきて、本来味方である同僚すら猜疑の対象になり、、むしろ四面楚歌な状況に。こちらの行動を全て読んだかのような狡猾な敵への逆転手はあるのか。腐敗しまくった官の中で闘う義の物語。2013/12/22
もも
7
「目の前のきたならしい受刑者を、羅維民は呆れ気味に眺めていたーー」から始まる、引き込まれずにはいられないストーリー。これは面白い、もっともっとと貪欲に読み進めていく。しかし途中ではたと気付く。自分が期待していた骨太な悪に立ち向かう公務員の話、ではあるのだが実感として文化の違いからか、登場人物が青ざめる場面で青ざめられなかったら、甥というポジションがそこまで強いのかが分からなかったり、ああこれを原文で、そして中国人として読んでみたかったなあと思うってしまう。これから下巻だか正直物凄く惹きつけられる!2017/03/28