内容説明
自然林や街路樹、屋根瓦、はてはコンクリート製の構造物上でも見ることができるふしぎな“植物”体。「これはコケなの?」いえ、違います。これは藻類やシアノバクテリアと共生関係を維持しながら生活する菌類の仲間、“地衣類”です。この摩訶不思議な地衣類の世界を、国立科学博物館で長年研究し続けてきた著者が、秘蔵の写真コレクションを使いながら紹介していきます。
目次
第1章 地衣類とは何か
第2章 身近に見られる地衣類
第3章 地衣類の生物学
第4章 地衣類の成長
第5章 地衣類の化学分類と地衣成分の検定法
第6章 地衣類とヒトとのかかわり
第7章 地衣類調査と標本のつくり方、写真撮影
著者等紹介
柏谷博之[カシワダニヒロユキ]
1944年、兵庫県生まれ。広島大学大学院博士課程修了。理学博士。元東京大学大学院理学系研究科教授(併任)、国立科学博物館名誉研究員、絶滅危惧植物・移入植物専門第二委員会委員長(日本植物分類学会)、専門は植物分類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おおた
14
地衣類の解説が中心で、個々の種について詳しい説明がある図鑑のような本ではない。藻類と菌類が共生する地衣類について概要を知るには良い本。菌類が体をつくり、守られている藻類が光合成をして菌類に栄養を与えている基本的なしくみを知ることができ、普段見ているコケ植物とはちがうなあと改めて実感。地衣類に興味がなくても、不思議な生活サイクルを概観することができるので、文章が多い生物読み物としても楽しい。2017/04/17
海星梨
9
KU。すんません、木に寄生してるんやと思ってました。かなり教科書的な内容。少しはガッツリ、この種はこう面白いところがあってとか、こんな変なことをしててとか、共生藻とどういうやりとりがあって地衣成分ができあがってるのかとか、個別事例的な内容を含むともっと面白いのに。2022/07/04
mft
6
電子書籍で。地衣類に興味を持って最初に読む本という想定だと思うが、それにしては細かい話(地衣成分の検出方法とか)を具体的な実践には使えない程度に紹介しているのが中途半端な印象を避けられない(この技法の説明では「街なかの地衣類ハンドブック」の方が親切)。偽盃点/擬盃点が混ざっているのは気になった。スミイボゴケ属が形態はだいぶ違うがムカデゴケ科という記述があったが、ここは最近調べてピンゴケ科に移っているのを知っていたので、古びた感を受けた。短所ばかり述べたが世界各地での調査の話などはそれなりに面白い2024/03/08
Teo
4
地衣類をまともに考えた事が無かったので簡単にまとまった本を見つけて読んで見たかったから手にした。まあまあ期待通りの内容。地衣類と言えば菌類の身体に藻類が共生していて菌類部分は大抵が子嚢菌なんて程度の事しか覚えていないのでもっと具体的な事例を知る事が出来て良かった。リトマスはリトマスゴケから得られる染料だったとはなあ。2009/11/20
いきもの
3
微生物の共生関係に興味があったため読む。細胞間のシグナル伝達とか、共生機構についてはあまり語られておらず、体の構造、ライフサイクル、分類といった博物学的な側面が強い。それでも有性生殖では菌のみの胞子が飛ばされるが、無性生殖では菌と共生藻がセットで飛んでいくというは興味深かったし、普通に読み物として面白かった。ただし第三章で説明される単語が第二章で説明もなしに続々と出てくるのには辟易した。2013/04/04