内容説明
なぜ戦争に?その終わりは?我々は何をすべきなのか?いま試される「法」「政治」そして「思想」。世界と日本が直面する問題の核心に法哲学者、井上達夫が真正面から迫る。
目次
プロローグ 我々は何処へ行くのか
第1章 いかなる戦争が戦われているのか(「ロシアは侵略していない」という不思議な「論理」;「NATOの東方拡大がプーチンを追い詰めた」のか?;「西側」の責任はどこにあるのか―責任の問い方に潜む罠;プーチンがウクライナを侵略した真の狙いは何か)
第2章 戦争はいかにして終わり得るのか(ウクライナ戦争の実相認識と国際社会の対応;第三国の仲介調停による紛争解決の可能性―中国の利害と期待可能な役割;戦争泥沼化の行く末―破滅は止められるか)
第3章 この戦争から日本は何を学ぶべきか(ウクライナ戦争の「当事者意識なき当事者」日本;立憲主義的統制に服する自衛戦力の確立)
エピローグ 壊れやすきもの、汝の名は世界
著者等紹介
井上達夫[イノウエタツオ]
東京大学名誉教授(法哲学)。1954年大阪市生まれ。1977年東京大学法学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buuupuuu
19
NATOの東方拡大によってロシアが追い詰められていたというのは誤りであり、ロシアのウクライナ侵攻の主因はプーチンが自国内での支配体制を守ろうとしたことにあったのだとする。著者は、チョムスキーのように米国の軍事的覇道を批判してきた人が「西側もロシアと同じことをしてきたではないか」というようなことを言ったことに深く失望したという。これはロシアを免罪するばかりか西側の過去の悪行を許してしまうことに繋がるからである。また日本は既に当事者であるにも関わらず政治家も国民もその意識を欠いていることに危機感を抱いている。2023/02/28
百式改(公論サポーター東海)
9
倉持弁護士は読み易いと言っていたが、論文よりはと言うべきだろう。 「プーチンのプーチンによるプーチンの為の戦争」が本質を突いている。 本書が著されてから半年が過ぎ春の訪れと共に露西亜の攻撃が本格化しそうな様相は杞憂に終われば良いのだが。2023/03/07
inu
6
ロシアのウクライナ侵略について井上達夫ならそう言うだろうな、ということが書いてあり、とっても井上達夫だった。国際政治学に足を踏み出した内容で、読む前は少し不安だったが、私には納得いく内容だった。国際政治学者による書評を読んでみたい。「二悪二正論」は、私自身も含めて陥りやすい陥穽なので気をつけたい。2023/03/14
千本通り
5
確固たる情報を基にした推論でまとめ上げた秀作。「NATOがプーチンを追い詰めたからウクライナに侵攻した」という一部知識人のロシア同情論を批判、単にプーチンの自己保身が目的だと喝破する。戦争を終わらせるのはロシア国民しかおらず「テレビと冷蔵庫の戦い」だと。日本人の当事者意識の低さを嘆いて最後に早急に憲法9条の改正をと。手に取りやすい新書にしたのにタイトルも内容も固く、著者らしいといってしまえばそれまでだが、マイナーな出版社のためか価格はちょっと高め。2023/01/21
nobuharuobinata
3
ロシアによるウクライナ戦争の理由について、①ウクライナ「脱ナチ化」であるとするピー賃の言説を否定し、②西側知識人がしばしば説く「NATO東進帰責論」も否定した上で、③プーチンが自らの権力基盤を維持するためであるという持論を展開している。さらに3つの独裁的な軍事強国が日本海を隔てて対峙しているわが国では、9条を改正して、自衛隊が現実にわが国を防衛するための法制度を整えるべきであるとしている。2023/03/31