内容説明
日本哲学界の第一人者がマルクスの高峰に挑む!マルクスを読むことは、世界の総体を読みとくことである。「全世界を獲得するために」マルクス「資本論」全三巻を読む。渾身の書き下ろし一五〇〇枚。
目次
序論 資本論をどう読むか
第1篇 資本の生成(商品と価値;価値形態論;貨幣と資本)
第2篇 資本の運動(生産の過程;流通の過程;再生産表式)
第3篇 資本の転換(利潤;地代;利子)
著者等紹介
熊野純彦[クマノスミヒコ]
1958年、神奈川県生まれ。1981年、東京大学文学部卒業。現在、東京大学文学部教授。専攻は、倫理学、哲学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Z
10
名著、名著、名著!資本論、第二巻、第三巻の解説は、比類ない明晰さを示している。宇野弘蔵の原論に即し、『資本論』の思考を、宇野派ののちの展開も追いつつ、かつ近代経済学のマルクスの受容、発展も視野にいれ、丁寧にマルクスの論理をおっていく。特に第二巻の数学的な思考を整理していただいたのがすごくありがたかった。頑張れば、高校生でも読める。転形問題、マルクスの価値と価格を同値とみるか否かにまつわる問題、なんて置塩信雄や森島通夫などの思考の整理までしていて、入門書ってこういうのを入門書っていうんだよ!と著者に感謝。2017/03/05
Happy Like a Honeybee
7
株式会社は金融貴族を再生産し、企画屋や名目役人だけの寄生虫を再生産し、株式取引についての思惑と詐欺との全制度を再生産する。それは私的所有による制御のない私的生産である。 佐藤優氏推薦の一冊。資本論9冊をわずか700ページに編集し、現代的で読みやすい。日本のマルクス経済学者を研究している印象。 資本利子、土地地代、労働労賃の三位一体とはキリスト教に由来するのか? 絶対的剰余価値を求める資本は、様々な形式で時間を横領する。2015/09/23
鏡裕之
2
すでに『資本論』を読破している人にとっては、「大食いメニューを食った! でも、まずかった!」。700頁以上を費やしてただ蛇足を付け足したのみという解説具合。これだけ付加価値、剰余価値のない解説が記された本も少ない。『資本論』を理解している人には、何も書いていなかったということを確かめるだけの700頁超。熊野先生、ハイデッガーやレヴィナスの翻訳では卓越した仕事をされているのだけれど、この本は……中身がなさすぎる。カントの翻訳をしながらこなしたのが、この薄さに反映されてしまったのた。なんとも残念すぎる一冊。2014/08/05
0
巻末の参考文献を参考にする。2016/03/03
しお
0
旧廣松グループに出入りしていた哲学者による『資本論』講義という位置付けで本書をとらえることは、日本語でマルクスを読むひとにとって歴史的意義を有する。廣松の影響下にあるという自覚のもと、著者は宇野学派など「異論」に当たる見解をパラレルに追いながら、資本論全巻を読解する。経済学批判としての『資本論』の三巻通じてようやく現れる地平を、本書は明快に描く。党派性の有無はともかく、『資本論』をこれから読む人を相手にするとき、本書は資本論の哲学的、批判的意義を提示する(半世紀前よりはるかに切実な)必要にこたえるだろう。2021/01/13