内容説明
K‐POPや韓国コスメ、文学作品の翻訳などカルチャー面での交流が活発な一方、泥沼化した政治情況につられてヘイトや嫌韓本が幅をきかせる日韓関係をめぐる言説。「戦後最悪」とも言われるターニングポイントで、もつれた関係を解きほぐす糸口をどう見つけるか?思想、歴史、安全保障、文化などの観点から、11名の執筆者が両国関係のこれからを考えるアンソロジー。「軽々には解けそうもない問題」を前にして、日韓相互理解の道を探る試み。
目次
二人の朴先生のこと
私が大学で教えている事柄の断片
歴史意識の衝突とその超克
韓国は信頼できる友好国となりえるか?
隣国を見る視点
炎上案件に手を出す者は、必ずや己の身を焦がすことになる
東アジア共同体をめぐる、ひとつの提言
韓国のことを知らない日本人とその理由
植民地支配の違法性を考える
卵はすでに温められている
見えない関係が見え始めたとき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
37
本著は、ぐちゃぐちゃにこんがらがった日韓関係の結び目をどうときほぐすかを考えるヒントをくれる良書です。マルクシストではなく、マルクシアンがどれだけいるかがマルクス主義の受容の深度とみる内田先生の「2人の朴先生のこと」。植民地支配の違法性に絡み、個人請求権は新しい創造物とする松竹さんの指摘も勉強になります。そして、伊地知紀子さんの済州島留学記がピカイチ。高潔ぶらず、至らなさや失敗を伏し目がちに開示し、正しさを追求せず、結論を焦らない。草の根の人間同士の付き合いこそが大切と教えてくれる。晶文社さんグッジョブ!2020/05/24
あまね
19
子供の影響で韓国ドラマに長く魅了されています。なので、韓国と日本との関係が悪化する度にとても残念で、日韓両国のお互いの歩みよりを願っていました。けれど、そんな思いは『無知という無責任』だったのだなとこちらの本を読んで猛省しました。寄稿されている皆様のご意見はどのご意見も勉強になるものでした。特に、自衛隊のご出身の渡邊隆氏の軸足のしっかりした文章は、実体験と深い見識に基かれています。渡邊氏が説く『対話の重要性』には、おおいに首肯しました。2020/06/24
spatz
16
いま、中学生の息子が、転換期を生きるきみたちへを読書中。これだ、と思う文に出会ったようで、自分と似た感覚を持った大人がいた、てことを喜んでいる、読書、て希望を与えるんだ、とわたしも感動。その一方で大人たちが本気出してくると、難しい、意味がわからない、言葉がすでにわからない、これ無理あたまに入ってこない、て論考にも出会う。また、理解力不足なのか、そもそも自分の考えと合わないのか、そこからわからなくもなる。 2020/09/29
Masakazu Fujino
14
様々な論者が、日本と韓国(朝鮮)の問題を解きほぐすヒントになる論考を提示してくれている。その視点を改めて確認できて、とても良かった。韓国語(朝鮮語)の学習もがんばろうと思った。2023/04/07
ta_chanko
13
近年の日韓関係の悪化は、自分の現在の立場からしか物事を見ていないこと、相手を知らないこと、知ろうとしないことに原因がある。相手には相手の立場や歴史があり、日韓がそもそも同じ土俵の上に立っていないことに気がついていない。気がつこうともしていない。これでは永遠に話が噛み合わず、両国の関係は平行線をたどるだろう。例え理解できなくても、互いに相手の立場に立って考える想像力や忍耐力が求められる。市民同士なら良好な人間関係をつくれるのに、国同士だとどうしてかくも難しいのか…。国家とは何なのか…。2020/07/15