内容説明
『AV女優』などの話題作でインタビューの名手として知られる永沢光雄が43歳の或る日、下咽頭ガンの手術で声を失ってしまった。その闘病生活を1年にわたり赤裸々に日記に綴った。朝起きる。ひどい首の痛み。そして、呼吸困難。鼻につながる気管も切除され、呼吸は左右の鎖骨の間に空いた穴から行う。全身にどんよりとした疲れ。まず最初の日課は焼酎の水割りで大量の薬をのどに流し込むことだ。そんな日々でありながら、筆者の筆致はユーモアに満ち、声を失った自分を時にはおかしく、時には哀しく描いている。何があっても生きる。だから、みんなも、毎日がつらくても生きて欲しい。他者への暖かいまなざしを持ち続ける筆者のそんなメッセージが行間にあふれている。
目次
1 二〇〇四年春
2 二〇〇四年夏
3 二〇〇四年秋
4 二〇〇四年冬から二〇〇五年
著者等紹介
永沢光雄[ナガサワミツオ]
1959年、宮城県に生まれる。大阪芸術大学中退。出版社を経て、88年以降、風俗、スポーツ分野でノンフィクション作品を発表。インタビュー集の『AV女優』が注目を浴びた。下咽頭ガン手術が成功するものの、声帯を切除したため、声を失った
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
12
「ぼんやりと時をやり過ごそう。自分の今のおかれている状況を直視しちゃいけない。直視したら、頭の中の脳ミソがぐるぐるにぐちゃぐちゃになって死んでしまいそうだ」。呼吸をするために決して小さいとはいえない肉穴が喉に穿たれた。そして彼は声を失った。生のベクトルが、負に向かう永沢光雄の痛々しいくらい赤裸々な日記。喉頭を摘出され変わり果てた体を受け入れることができず、酒に溺れ、妻に甘え、友人に甘え、ガンに甘え、病気に甘え、怠惰に生きる永沢に読者は辟易するかもしれない。しかしながら、その苦悩をありのままに受け入れ読んで2013/07/06
zakuro
3
ガンになった元編集者の日記。朝目覚めると大量の薬を焼酎で流し込むのが日課。病気を治したいのか、死にたいのか。痛みを取りたい死にたくないと思うなら、もっとちゃんと生活しろ。ほとんど毎日通院するなら入院してればいいものを。こういう人が健康保険制度をつかうことに疑問を感じた。一体どうやって生活しているのか、ヒモか。奥さんが働いている形跡もなし、金の出どころが不思議だ。しかしこんな状態の人にも仕事くれる人いるんだね。短命だったけど、女にも仕事にも恵まれた幸せな人。響く言葉があるかと思って読んだけど無駄足だった。2019/10/12
TH−05
2
酒やギャンブルでダメダメな生活を送っているのですが、どんなときでも肯定的に受け入れてくれる優しさに周囲の人たちから愛される永沢さん。 そんな永沢さんがガンで声帯を切除。声を失うことに。 インタビュアーが商売道具の声を失うことに、どういう反応をされるか気になりましたが・・・。 術後も後輩の死や大好きな近鉄バッファローズの消滅、強い鬱病などに悩まされることが起きますが、それでもどんな姿になっても生きることをあきらめなければ活路がある。ダメおっさんの瞳の奥にある熱い言葉がガツンときました。 2012/04/14
ろくたろう
1
ただただ素晴らしい本。手元に欲しいけれども、絶版でなかなか見つからない。ガンを患い、声を無くして、アルコール中毒で、うつを患って、という悲惨な状況にあって、読者を笑せてしまう文章を書いてしまう著者。こんなに味わいのある文章ってなかなか無い。2021/02/28
鳩麦茶
1
人の日記の感想を書くことは思いのほか難しい、と理解できたのが一番の収穫。さらさらと読めるのだが、おもしろい小説などのようには「入っていく」ことができないのだ。当人だけの体験を赤の他人が覗き見るわけで、それではまあ当たり前なのかもしれないが。鼻・口で息ができない日常は、さぞ大変だろう、と想像はできる。が、他人には無論理解できるはずもないわけで。申し訳ないものだな、と思った。2012/01/08
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