内容説明
「名画」は、描かれたときから「名画」だったわけではない。国の威信、学者のメンツ、経済の動向、メディアによる毀誉褒貶…。20世紀を通じて、とくに「戦後」的状況のなかで形成された、日本美術史に対する視線のフィルターは、思いの外、分厚い。思いこみや馴れあいをご破算にして、日本美術の本質を見つめるために、日本美術応援団団長・山下裕二が煽動する「日本美術評価史」。
著者等紹介
山下裕二[ヤマシタユウジ]
1958年、広島県呉市生まれ。東京大学大学院修了。日本美術史専攻。現在、明治学院大学文学部芸術学科教授。日本美術応援団団長
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感想・レビュー
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紫
3
2003年刊行。二十一世紀の美術研究の指針となる……はずだったかもしれない一冊。連載当時の最新の知見にもとづき、二十世紀後半の日本美術研究の問題点を振り返ってみるというのが本書のテーマ。美術界における権威主義やブランド志向、画一的で固定した評価への容赦ない批判。東洲斎写楽の正体がほぼ確定してからも別人説の流行が衰えないのは何故か、その背景をここまで明快にぶったぎってみせたものは他に見当たらないような。単行本で出版されたきり、文庫化もされず、埋もれてしまっているのは勿体ない限りなのであります。星5つ。2020/05/03
わかめスープ
1
山下さんこんなにトガッてたの!?と思うくらい、昭和の美術史会のオレキレキに対して己の意見をキッチリ述べる様が読んでいて気持ちがいい。批評家魂を見た。2022/05/20
辺野錠
1
20世紀の美術史上での事件が色々と取り上げられてて面白い。俺としてはヒットラーが絶賛した水墨画の話や高松塚古墳の壁画発見の詳細な話が印象に残った。2012/12/21
yoh_yoh_tune
1
再発見やブームによって価値が見直されることは歓迎したい。いまの時代における意味を考察することとか。たかがブームでも、感度の高い若者が、何かしら得るかもしれないし。2012/10/28
kitarou
1
2000年頃の「is」の連載で2003年に単行本になっている著書だが、今、読んでもちっとも古くさくない一冊。今ではスーパースターとなり、誰もがもてはやされる作家たちが、20世紀には片隅に追いやられていたかと思うと不思議な気がする。時代により評価はかわるのだなと思ってしまう。2011/08/10