内容説明
ノルウェイの山中で転落事故にあい、大ケガを負った脳神経科医サックス。手術により傷は癒えたが、なぜか左足が自分のものであるとは感じられない。神経の障害のため、脳のなかの左足のイメージが失われてしまったのだ―。すぐれた医者が、回復までのみずからの症状の変化と、「患者」として生きる者の内面世界をつづる。心とからだ、病と癒し、患者と医者のありかたについて鋭く深く考察するメディカル・エッセイ。
目次
1 ノルウェイ山中の事故
2 患者になった医者
3 出口の見えない暗闇
4 よみがえる
5 ふたたび一歩をふみだすまで
6 リハビリテーション
7 「人間の医学」への道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Roko
27
サックス氏はノルウェイの山中で転落し、左足を「大腿四頭筋切断」してしまいました。手術によって切れた部分をつなぎ合わせ、ギブスをはめられ入院生活が始まりました。それまで医師として働いていた彼は、初めて患者としての立場でものを考えるようになったのです。医学的には治っていても、精神的に何かがひっかかっているために症状が治らないということは、患者の話を聞いただけでは治療者には理解しがたいことです。サックス氏は自分の体験を、その後の治療に役立てたのです。リハビリのために行ったプールの話は特に面白かった!2021/07/19
Nyah
13
幻肢とか幻肢痛とか、エイリアンハンド(他人の手)症候群について興味があった時に読みました。
p-r
2
読み始めた時は、これほどまでに大切な一冊になるとは思っていませんでいた。自身の経験と交差して、心の声が降り注いで来るようでした。とめどなく溢れては寄せてくる、言葉の波に乗って、どんどん沖へと漂いたくなる。これまで読書をしてきた中での初めての感情でした。 今、病院で悩んでる患者さんの横に、そっと置いておきたい一冊。そして、医療に関係していらっしゃる方々にも、是非手にとっていただきたい貴重な本だと思います。再販を切望します。2020/08/03
くさてる
1
大けがにより左足の感覚を失った脳神経科医が、患者の立場になって知ることになった様々な心の揺れ動きと、回復までの道のりを記している。病や障害を得ることがどういう意味を持つのかはその当人にしか分からない。けれども、その体験が人間に与えるものはなにかを考察することは意味があることだと感じた。2012/05/06
りんふぁ
0
『妻を帽子と間違えた男』と同じ著者で気になり借りた。こちらは著者自身の闘病経験記録。あるのに無いと感じるのは面白い。けど、少しだけ分かるかも。わたしも麻痺の部分は視覚確認しながらだと触ってると思うけど、視覚無しだと全くわからなかった。つくづく、人の体は面白い。2016/03/12