内容説明
パリ留学からロンドンに帰った研究者ルイスは、最愛の母をとつぜん亡くす。慰めをもとめて、彼は図書館員ティシーとの結婚を決意する。神経質で不安定な彼女を、どこまでも庇護してゆくつもりだった。だがティシーは、妻となるや意外な逞しさを発揮しはじめる。心のかよわない結婚生活。家と大学図書館を往復するだけの単調な毎日。そこに、抗いがたい魅力をふりまく一人の女が現れる…。ある者はその弱さによって、ある者はその強さによって、ルイスをさしまねく女たち。内気で、青臭い純真さをいつまでも棄てられないルイスを主人公に、長い惑いの日々とその旅立ちを克明に描きだす会心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きりぱい
3
こんなはずじゃなかった結婚。守ってやりたかった対象は心のよりどころにはならなかった。下手に純粋を抱えたままいい大人になったルイスに比べて、妻となるティシーは妙に根深い弱さ以外につかみどころがない!そしてその母も変わり種。従順な貞節か刺激ある高揚か、両方に慰めを見出しても不思議と嫌悪感を抱かせないルイスの小心さ。単調で気まずいばかりの内容でも穏やかに文字を追えるのは、情緒をしっとりと描くブルックナーの筆運びのせい。ルイスは転機を活かせるのか、本当に最後の最後でキラッと射す光にぐっときた。2010/09/08
serene
0
良くいえば純粋、悪くいえば短絡的でひとりよがりな思考をしがちなルイス。 どちらかというと後者の印象が強かったのだけれど、読み終えてみれば、あまりにも変わらぬその純粋さを愛おしく感じている自分に気づいてしまった。 ルイス、あなたの未来を応援してる。2011/02/25