出版社内容情報
世界で唯一、木製家具コンペティションを開催する北海道旭川市の「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)」。三年に一度、世界各地のクリエーターたちが旭川に集い、オリジナルの木製家具デザインを発信している。このフェアを創設したのが、アメリカ・ヨーロッパ・アジア圏へ進出している家具メーカー「カンディハウス」の創業者・長原實である。本書では椅子職人としての60年にわたる長原のクラフトマン人生をたどっていく。
明治期、豊かな広葉樹の産地である旭川では木製家具産業が発達し、戦後は箪笥などの高級家具で一時代を築いた。しかし高度成長期になると「箱もの家具」の衰退により、「旭川家具」は低迷に向かう。長原は、それまで誰も手をつけなかった「脚もの家具」のメーカー直販を先行し、世界の一流デザイナーとのコラボによるデザイン家具を切り札に、独自の販売路線を切り拓いていった。長原の歩みはデザインへの目覚めからはじまる。「子どもにも優しい木製家具」という目線を崩すことなく、大雪山系を望む北の大地に生きる生活者の感性を磨いた「ふだん着のエレガンス」で、潤いと機能美をシンプルに意匠した。その誰にも真似のできない感性は、人をして彼を「100年に一人の異才」と呼ばしめる。
長原は業界の枠を越えた知力と行動力、そして「ものづくりは人づくり」という持論で、「旭川家具」を導き、地方都市の産業のあり方や未来への「処方箋」をも指し示した。彼の歩みからは、先端技術をもつ職人とデザイナーとの協働による「知的産業」のあるべき姿が見えてくる。
本書では、長原とかかわりのあった多くの方々に取材を敢行したほか、「カンディハウス」の職人たちが綴った文章なども掲載している。「こだわり」に満ちたそれらを読むと、今あなたが座っている椅子は単なる家具ではなくなるだろう。椅子職人であり、デザイナーであった長原は、2015年10月8日、泉下の人となった。享年80歳、合掌。(かわしま・やすお)
川嶋康男[カワシマヤスオ]
ノンフィクション作家。著書に『七日食べたら鏡をごらん』(新評論 2013年)、『永訣の朝』(河出文庫 2008年)、『いのちの代償』(ポプラ文庫 2009年)など。『大きな手大きな愛』(農文協 2008年)で産経児童出版文化賞JR賞受賞。
内容説明
「旭川家具の巨人」が拓いた世界市場と向き合う処方箋!!「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)2017」へのラストメッセージ。
目次
第1章 椅子を旭川家具の主流に
第2章 アメリカへ、ヨーロッパへ
第3章 世界一の木製家具デザインコンペ「国際家具デザインフェア旭川」
第4章 長原實のデザイン・スピリッツ
第5章 世界と向き合う「旭川家具」
第6章 たった一脚の椅子で気分が変わる
第7章 カンディハウス二一世紀の羅針盤
第8章 「国際家具デザインフェア旭川」から公立「ものづくり大学」
終章 「メイドイン旭川」の本懐
付録 カンディハウスの椅子コレクション
著者等紹介
川嶋康男[カワシマヤスオ]
ノンフィクション作家。北海道生まれ。『大きな手大きな愛』(農文協)で第56回産経児童出版文化賞JR賞(準大賞)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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