出版社内容情報
被災地と全国の条件不利地域における漁・水・農・畜産業の深く静かな取り組みに、地域産業と暮らしの未来像を学ぶ。
2008年3月に第一弾を刊行して以来、本シリーズも今回で6冊目、ほぼ1年ごとに30話ずつ、この第6集で計180話にのぼる各地の「現場」の息吹をお伝えすることになる。特にこの一年は、大震災からの復旧・復興が着手された一年でもあったが、被災地ばかりでなく日本の各地で興味深い取り組みが重ねられてきたように思える。いずれの地域を訪れても、「人と人のつながり、地域を大切にしたまちづくり」「地域資源を有効活用」「地域に仕事をつくる」「都市と地方の連携」などが語られ、「現場」の人びとは皆、自分の仕事を深く見つめ直していた。成熟社会、少子高齢社会の入口に立っていた私たちは、震災の過酷な経験を踏まえて、限りある地球の資源によって生きるものとして、身の丈に合った経済や産業、企業のあり方が求められていることを痛感しつつあるのだろう。今回の大震災後の産業面での復旧・復興の最大の焦点は、漁業、水産加工業、農業、畜産業である。そのような点を意識し、この第6集では、主として全国の条件不利地域のこうした産業群の「現場」に分け入っていく。実はこれらの産業は従来「遅れた領域」とみなされ、戦後60年にわたる保護政策の中にあったのだが、2000年を前後する頃から、優れた農・水・畜産物の直売、付加価値を高めるための加工、現場での体験を伴う魅力的な飲食機会の提供など、興味深い取り組みが深く静かに実践されていた。それは「六次産業化」「複合経営」などと呼ばれ、20世紀後半型の「大量生産・大量流通・大量消費・大量廃棄」モデルとは異なる、地に足の着いた産業と暮らしをめざす人びとの「自立」へ向かう取り組みでもあった。
筆者はこの一年も、被災地の「現場」に加え、多くの条件不利地域の地域産業の「現場」訪問を重ねてきた。そこでは上記のような領域を基盤に、人びとの地域への「思い」に満ちた取り組みが続けられていた。被災地の復旧・復興の「現場」と、全国各地の条件不利地域の「現場」のいずれもが、私たちに勇気を与え、「未来」を語りかけているのであった。(著者 関 満博)
内容説明
被災地を含む条件不利地域に私たちの「未来」が胚胎している。東日本を含む各地でいま、六次産業化・農水産物加工・農業経営の新たなうねりが生じている。その創造性に富む取り組みから、成熟社会に向けた勇気と指針を学びとる。第151話~第180話収録。
目次
1 六次産業化の新たなうねり(富山県礪波市・有機、果樹、加工、カフェを展開―脱サラして家族で新たに展開「農工房長者」;高知県高知市(旧春野町)・写真館が地産農作物に新たないのちを―仁淀川流域の集落連携を目指す「スタジオ・オカムラ」
兵庫県神戸市・広域JAによる農産物直売所の展開―神戸農業を伝える「農野花」 ほか)
2 農水産物加工の新たな世界(北海道厚沢部町・北海道で本格焼酎を生産―原料生産地に工場建設「札幌酒精工業」;秋田県美郷町・納豆発祥の地から全国展開―納豆と企業の進化を目指す「ヤマダフーズ」;富山県礪波市(旧庄川町)・伝統の醤油から加工品に展開―地元に愛されながら、幅を拡げる「トナミ醤油」 ほか)
3 農業の新たな可能性(北海道幕別町・十勝の大地からベトナムまで―早くから法人化を進める「北海道ホープランド」;北海道江別市・五代目の若い後継者が登場―第六期江別若手経営塾に集う「いとうファーム」;鹿児島県伊佐市(旧大口町)・鹿児島黒豚生産の先駆者―地域の伝統を継承「沖田黒豚牧場」 ほか)
感想・レビュー
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