出版社内容情報
日本型ネオリベラリズムを乗り越える戦略的議論!
昨今の景気回復にもかかわらず、「失われた10年」と呼ばれた1990年代以来の日本の喪失感はむしろ強まっている。年金や雇用をめぐる不安、戦後かつてない所得格差の広がり、持続する金融・財政危機のほか、日本経済を底支えしてきた地域社会が極度に疲弊し、崩壊の淵にある。本シリーズの編者の1人で経済評論家の内橋克人が早くから警鐘を鳴らしてきた通り、その背後にあるのは、市場原理を偏重した「構造改革」にほかならない。 ラテン・アメリカ諸国では、同じく「失われた10年」と呼ばれた社会経済現象が一足早く1980年代にみられた。南米アルゼンチンの場合は90年代にも「もうひとつの失われた10年」を経験した。前後一連の社会経済病理も含めて、これらもまた日本と同様、市場原理偏重の「構造改革」によってもたらされた。これは批判的なラテン・アメリカ地域研究者の常識である。とすれば、日本はラテン・アメリカの先行経験から反面教師的な教訓を得られるのではないか。またラテン・アメリカの政府、企業、市民社会が「失われた10年」の罠から逃れようと編み出してきた知恵からも、積極的な示唆を読み取れるに違いない。このような直感の下、内橋克人とわれわれラテン・アメリカ地域研究者が共同研究を重ねて編んだのが本シリーズ〈「失われた10年」を超えて――ラテン・アメリカの教訓〉全3巻である。第1巻『ラテン・アメリカは警告する――「構造改革」日本の未来』は、シリーズ全体の総論となる。そこでの主な論点は、日本の「アルゼンチン化」の危険性、日本とラテン・アメリカにおける財政危機・金融危機・積立年金問題・雇用柔軟化の類似性、それにポスト「構造改革」政策(チリ、ブラジル)や「共生セクター」(中小企業の産業集積、メキシコの先住民協同組合、アルゼンチンやエクアドルの地域通貨など)の成果と限界、さらにはそれらが日本に与える示唆である。なお、続刊の第2巻と第3巻では、地域社会の再生に果たすべき中小企業と市民社会の役割を考える。
シリーズ続刊案内
第2巻 田中祐二・小池洋一 編
地域経済はよみがえる
目次
総論 日本「構造改革」論の虚実―ラテン・アメリカを既視感として
第1部 ラテン・アメリカの新自由主義の経験から何を学ぶか(「失われた一〇年」を超えて―ラテン・アメリカの教訓;財政危機を民主的に乗り越える;高齢者の生活保障をどうするか―アルゼンチンの年金改革に「学ぶ」;金融危機をどう克服するか―望まれる中小企業対策の充実;新自由主義的な労働改革がもたらすもの―ペルー・フジモリ政権の経験;アジアのラテン・アメリカ化)
第2部 新自由主義を乗り越える―真の構造改革と共生経済へ(チリ経済の「奇跡」を再検証する―新自由主義改革の虚像と実像;「社会自由主義」の成果と限界―ブラジル・カルドーゾ政権の経験から検証する;人間中心主義社会への転換;競争するために協力する―地域社会再生のための産業戦略;連帯経済の構築と共同体の構造転換―メキシコ最貧困州チアパスの経験から;地域通貨で生き延びる―「社会的経済」の地平)
著者等紹介
内橋克人[ウチハシカツト]
1932年生まれ。経済評論家
佐野誠[サノマコト]
1960年生まれ。新潟大学経済学部教授。博士(経済学)。開発経済学およびラテン・アメリカ経済論専攻
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