出版社内容情報
【天と地をむすぶ偉大な世界観のもとで】モンゴルの人々が遺した唯一の歴史書「元朝秘史」と数々の資料から、原初のシャマニズム文化を復元し、地域文化の多様性に宿る基層に迫る。
北アジア(モンゴル高原、シベリア、中国東北平原)では、古来シャマニズム文化が人々の世界観の核をなしていました。本書は、失われつつある彼の地の最も原初的なシャマニズム文化を復元し、その「実在性」を解き明かす文化論です。北アジアのシャマンの仕事は、共同体の危機を救うことでした。重要な選択の際に神託を伺ったり、病人の魂を天界から連れ戻したりする仕事です。これだけを見ると、想像力が痩せて久しい私たち現代人にとって、シャマニズムとは単なる「絵空事」に思えるかもしれません。しかし、それらは「絵空事」では決してなかったのです。人々は、シャマンを媒介として、天界―地上という世界観を構築し、人の力で制御できない自然災害、生老病死など、魂に危機をもたらす様々なことがらに「折り合い」をつけていたのであり、彼らにとってシャマニズムとは、生きていくうえで不可欠の世界像だったのです。「折り合い」をつける。現代の私たちが忘れてしまった彼らのこの「心の技術」には、豊かな智恵が溢れています。昔は私たちも、そんなふうに生きていたのでは…?本書は、私たち自身の魂の淵源でもある北アジアの文化を、独自のアプローチで丹念に読み込み、そこから私たち自身の魂の危機に少しでもヒントを得ようという斬新な試みです。
内容説明
北アジアのシャマニズムは、人間の創造力の源泉ともいうべき深層意識領域の心の働きによって形成された人類の偉大な創造物であり、人間存在と自然に対応して宇宙的な構造をもつ宗教的リアリティであった。したがって、北アジアのシャマニズムを正しく理解することは、この地域の人々だけでなく、ひろく人類が世界(宇宙)や自然・社会をどのように解釈してきたかをあらためて知ることにもなり、私たちの生き方に数々のヒントを与えてくれるであろう。
目次
第1部 『元朝秘史』の世界(天の定め、天の恩寵;遠い祖先、伝承の世界;『元朝秘史』が描く社会)
第2部 北アジア文化の形成(先史時代の呪術‐宗教的観念;狩猟文化と北アジアのシャマニズム;天神崇拝と北アジアのシャマニズム;シャマン、その人間像)
第3部 シャマニズムと現代(シャマンのトランス意識;「元型」と魂の危機;心的過程が顕現するもの;シャマンの世界;「現代」と深く関わるシャマニズム)
著者等紹介
佐藤正衛[サトウマサエ]
1944年東京生れ。慶応義塾大学経済学部で社会・経済思想史を専攻。近代ドイツの非合理主義思想や生の哲学を学ぶ。1999年大手化学会社退職後は、十年来の構想のもとに中央ならびに北アジアの歴史と文化の研究に専念。ここ数年は『元朝秘史』を文化史の観点から読み解くことに傾注。ユーラシア大陸規模のアジア・アジア人論を生涯のテーマとする。横浜市在住
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