出版社内容情報
生い立ちから最晩年までを赤裸々に語った詩人の絶筆。随所に鋭い批評が光る。
内容説明
戦後現代詩を代表する荒地派の詩人・北村太郎が、自らの生い立ちから最晩年までを赤裸々に語った未完の自伝。懐かしい少年時代、詩へのめざめ、突然の妻の事故死、晩年の恋、詩誌「荒地」の詩人たちの肖像などが、鋭い批評とともに綴られる。第二部では、病に冒された詩人の語りを詩人の正津勉氏が書き起こし、北村太郎の語り口そのものがうかがえる異色の自伝となっている。「生涯ひたすらに感覚を繊細にしつづけ言葉を厳密にしてきた詩人」(正津氏)の絶筆の書である。
目次
第1部(幼少年時;投稿時代;ルナ・クラブ参加;第二次大戦)
第2部
著者等紹介
北村太郎[キタムラタロウ]
1922年東京生まれ。1992年没。本名・松村文雄。東京大学仏文科卒。戦前から「ル・バル」に参加、戦後は鮎川信夫、田村隆一らとともに「荒地」を創刊し、戦後的感性を見事に定着させた詩的世界を確立した。1966年、第一詩集『北村太郎詩集』を刊行、以後数多くの詩集を上梓する。おもな詩集に『犬の時代』(芸術選奨文部大臣賞受賞)、『笑いの成功』(藤村記念歴程賞受賞)、『港の人』(読売文学賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かふ
18
戦後詩人で「荒地派」北村太郎の自伝。高校生ぐらいから詩を書き始めた早熟の詩人が性格の違う酔っぱらい詩人の田村隆一と知り合ったり、「荒地派」時代の鮎川信夫や黒田三郎、中桐雅夫らとの出会いや想い出、ラムラ隆一、黒田三郎、中桐雅夫は三大酔っぱらい詩人だった。 北村太郎は田村隆一とは学生詩人仲間で仲がよかったようだが、晩年には三角関係の恋のライバルだった(『荒地の恋』)。田村隆一の名前は出してないが正津勉の解説で明らかにされる。2024/12/04
タイコウチ
9
このところ橋口幸子さんのエッセイやねじめ正一さんの「荒地の恋」を再読していたところに、ちょうど文庫化された北村太郎の亡くなる直前の口述を元にした回想。10代からのつきあいで3つ年上の鮎川信夫への敬愛がよくわかる。戦中は通信隊で暗号解読をやっていたという。ポーの「盗まれた手紙」や「黄金虫」を精読していたとか。「兵隊に来てまで英語をうんと勉強しなければ駄目だなんていわれていたのはありがたい感じがしました」。これが後の翻訳の仕事につながるのかと!さらに晩年の詩には当時の恋人の名前が暗号で編み込まれていたなんて!2021/03/12
糸くず
4
戦後の現代詩人による自伝。第一部は著者本人の書いたもの、第二部は北村の語りを詩人の正津勉が書き起こしたもの。自身の家族や学校生活、「荒地」に属する仲間の詩人たちとの交流が淡々と、しかし率直に語られていて面白い。中でも三つ上の先輩である鮎川信夫、同学年の田村隆一について詳しい。「東京ガスに就職したにもかかわらず、一日も出社しないで辞める」など田村の破天荒な人柄は傍目から見る分には笑えるが、田村の妻・和子(文中では「A子」)と北村との三角関係は地獄でしかなく、身近にいたら絶対に関わりたくない人である。2021/08/07
ふう
2
『荒地の恋』関連で読む。不治の病の詩人の語りおろしを第一部は本人が、その死により第二部は聞き手が原稿にした自伝。“恋愛事件”のことはほんの一部だけど、小説がほぼ事実どおりだとわかった(阿子は?)。他の詩人達との交わりの様子や、戦争へ向かいそして終わる時代の空気が感じられた。2024/08/30
うりこ
1
詩人北村太郎の自伝であり、絶筆。文庫として発行になったというので、読んだ。これまで北村太郎の詩をあまり読んだことはない。正直、よくわからない。 だけど、この本は面白かった。北村の価値観、視点で「荒地」の仲間詩人への思いが綴られていて、興味深く読んだ。北村さんは素直な人なんだなあ。律儀な所も言葉に表れている。ぽつぽつと北村さんの詩も読んでみようと思った。2021/03/14
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