内容説明
十七歳の喜春。朝は英語学校に通い、昼はお稽古、夜は新橋芸者となって政財界の名士をもてなす日々。花柳界唯一の「英語のできる芸者」としてチャップリンやコクトー、ベーブ・ルースなど錚々たる人たちも接待し、多くから慕われた芸者だった。銀座の医者の家に生まれ、芸者になったいきさつ、水揚げ、華族との恋、そして外交官との結婚と、戦前の花柳界を華麗に生き抜いた喜春姐さんが波乱の半生を記す。世界数カ国で翻訳された大ベストセラー。
目次
許可地の朝
箱部屋のロマンス
お舟行き
水揚げ
あたしの生い立ち
ゲイシャ・キハル
お邸行き
お披露目
ごひいきになったお客様
出世払い
芝居の通訳
警察からの呼び出し
引祝い
印度総領事館
和製マタハリ
収容所生活
著者等紹介
中村喜春[ナカムラキハル]
1913(大正2)年銀座生まれ。2004年没。16歳で新橋の芸者となり、お座敷をつとめながら専門学校で英語を習得。海外の著名人の接待や、戦後の進駐軍との通訳で活躍。1956年アメリカに渡る。オペラのコンサルタントをするかたわら小唄や長唄など日本の古典芸能を教え、コロンビア大学等で東洋哲学の講義もしていたが、ニューヨークで晩年を迎えた。『江戸っ子芸者一代記』は、ドイツ語版、スペイン語版、チェコ語版はじめ世界数か国語に翻訳刊行され、それぞれに好評である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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honey
2
著者は比較的裕福な家庭で育ち、 花柳界に憧れ自前で新橋の芸者になる。 伝統芸能を英語で説明したい一心で専門学校に通い英語をマスターする。 朝は6時半起床で英語の学校、午後は長唄の稽古に通い、その後支度をして6時にはお座敷に出るという毎日を過ごし、英語が話せる芸者として有名になっていく。 そんな 喜春さん の生い立ちから外交官の夫と結婚しインド滞在までを綴った自叙伝。なんと好奇心旺盛で気風のいい方だろう。戦後編・アメリカ編も読んでみたい。2012/10/18
本ゆり本
1
★★☆2021/10/31
チダ(uy1)
0
翻訳のプロお爺ちゃんたちよりも英語ができすぎて、空き地に誘われて数人の男たちから袋叩きに合いそうになったお話など、そりゃ、日本がいやになるよなー、アメリカが好きというのにもつながる。読みやすく、切符がいい江戸っ子の会話文章雰囲気が伝わります。各国語に翻訳され世界でファンがおおいもわかります。 2015/08/19
Ayako Moroi
0
戦前の最も華やかだったであろう新橋の芸者喜春姐さんの一代記。この方のエッセイは高校生の頃に楽しんで読み、先年訃報に接した。芸者に出て国内外の著名人をもてなすわ、英語を習うわ、飛行機に乗るわ、華族と恋をするわ、外交官と結婚するわ、この1冊だけで、私の人生の何倍も波瀾万丈だ。東京の芸者について知りたいと思っていたので、勉強になった。特に、借金を背負わずに芸者に出ていたこともあって、水揚げの相手を拒んだ話には吃驚。そういうこともあったんだねえ。2014/03/07
sachi716
0
戦前の花柳界の仕来りやお客さんの興味深い話と、外交官と結婚してからの戦中のインドの暮らしなど、伸びやかな話し言葉でテンポよく進んでいく。 読後感がいい。 波瀾万丈の人生の続きが読みたい。2013/08/06