ある英国人作家の偽りと沈黙

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ある英国人作家の偽りと沈黙

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  • サイズ B6判/ページ数 294p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784794206022
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

伝記作家マーク・ラミングは、20世紀前半に活躍した作家ギルバート・ストロングの伝記執筆にとりくんでいる。ストロングについてはだれよりも知り尽くしているつもりだったが、存命の知人たちの証言はさまざまに食いちがい、その生涯には何の手掛かりもない沈黙の部分があった。ストロングの実像はとらえどころがなく、マークの目には、彼が真実を隠蔽しようとあらかじめ仕組んでいたかに見えてくる。そして、ふとした偶然から、マークは、ストロングがひた隠しにしていた事実、彼の意外な側面を知って、衝撃を受ける。個性的な登場人物を生き生きと描き、歴史が語らない人間の真実を浮き彫りにしてゆく、魅力あふれる作品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きりぱい

7
よかった!3年後にブッカーを取った『ムーンタイガー』より断然面白い!(ちなみに本作は最終候補止まり)。執筆のための調査に唐突な恋が絡み、伝記作家のマークがちょっと疎ましいながら、調査対象の作家の孫娘キャリーは風変り、妻のダイアナは何気に鋭く、証言の食い違う関係者たちもと、登場人物たちそれぞれに面白みがある。考えや会話に英文学作品が出てくるのが楽しく、キャリーの覚醒にオースティンの『エマ』が効果的に使われるのも面白い。それまで平然とプライバシーに触れてきたマークの心をゆるがせる、作家像の欠落部分とは・・。2011/11/16

Mark.jr

2
伝記作家がとある作家を調べると衝撃の過去が...、という粗筋とこのタイトルを見ると想像つかないかもしれませんが、実はこれは作中の出来事がなかったら絶対に惹かれ合わなかった二人の恋愛ものです。異なる価値観もつ者同士の接触という点では、e.m.forsterの作品直系といっても良いかもしれません。2020/09/16

takeakisky

1
キャリーとダイアナ。両極端な女性。伝記作家マーク。次回作は評論家ストロング氏の伝記。ロンドンと郊外、英国とフランス、現在と幾つかの過去。様々な対比と移動をうまく散りばめてある。生前のストロングを知らないマークが彼の生前を知る人々から得る情報。矛盾もある色々な顔。少し都合のいいタイミングでアクシデントが続く後半は、微笑ましく読む。すわりの悪いラスト。途方に暮れる。そこが良いと思う。According to Mark。福音書を連想させるタイトル。伝記作者の話として洒落ている。84年ブッカーのショートリスト。2024/01/18

kalera

0
主人公マークの妻ダイアナが現実的な人物で、キャリーと対照的なところがおもしろかった。2012/07/21

madhatter

0
物故した作家が仕掛けた、後世に対するあまりにも切ない「偽り」が、本作の軸となっている訳だが、同時に本作は、それぞれの登場人物の読書に於ける意味合いや力を描いた作品ではないかとも思う。個人的に「読書の力」の働き方は、キャリーのそれが最も心に残る。しかし、卑近なところから物語の軸へと接近する契機が見つかる後半部の流れと、主人公の「読書の意味」と物語の軸が絡み合う、あのラストシーンは非常に美しい。2012/02/18

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