内容説明
イギリスではなく何故アメリカで経営管理が発展したのかという根本的課題については、アメリカがイギリスと異なり、当初から機械を中心とする工場制度を発展させたという見解があるが、世界で最初に産業革命を達成し機械制大工業を発展させたイギリスで工場管理が成立せず、アメリカで近代的管理が完成された理由については依然として明確な論点が展開されていない。その点をこの論文では、機械制大工業段階での万能機→専門機→単能機という道具機の発展過程に着目することによって補捉している。イギリスとアメリカの技術管理の差異を明確にした点が本書の特徴となっていると考える。そして今一つの特徴は、アメリカにおいてはこれらの機械技師の集団が後に独自の専門集団すなわちアメリカ機械技師協会(ASME)を結成し、アメリカの工場制度の発展に大きく貢献したという事実関係に対して、かれらの出現を促した背景にはアメリカ合衆国が建国以来国是ともいうべき技術立国を目指し、技術者養成機関及びそのための学校を数多く創設していたという技術者教育への伝統があったことを改めて明らかにし、その結実が近代的管理を成立させた点を論証したことである。
目次
序章 第一回万国博覧会とアメリカ的生産方式
第1章 アメリカの工場制度と管理職能
第2章 アメリカの技術教育と管理論形成
第3章 アメリカの管理制度の展開
第4章 アメリカの管理の組織化
第5章 アメリカの経営管理の発展