出版社内容情報
正義感溢れる小説家か、それとも植民地主義の相続人か――。
『異邦人』に登場する「アラブ人」には名前がなく、『ペスト』の舞台アルジェリア・オランに登場するのは、フランスからの入植者ばかり--。反植民地主義者にしてヒューマニストという称号を与えられた作家アルベール・カミュの、もうひとつの顔を描き出す。今なお根強く残る植民地主義めぐるタブーに踏み込んだ、画期的ドキュメント。
序文=フレドリック・ジェイムソン
解題=中村隆之(訳書『カリブ海序説』ほか )
内容説明
『異邦人』に登場する「アラブ人」には名前がなく、『ペスト』の舞台アルジェリア・オランに登場するのは、フランスからの入植者ばかり―これまでにない視点からカミュの代表作を読み直すことで、反植民地主義者にしてヒューマニストという称号を与えられた作家の、もうひとつの顔を描き出す。
目次
序章
第一章 人間の顔をした植民地主義のために
第二章 植民地の表象
第三章 サルトルとカミュ、離れがたき二人
第四章 アンチ・サルトル
第五章 受容
カミュ、先取りのポストモダン
著者等紹介
グローグ,オリヴィエ[グローグ,オリヴィエ] [Gloag,Olivier]
アメリカ合衆国の文学研究者。主な研究テーマは、フランス文学における植民地表象、政治理論、20世紀フランスの文化史と文学史。デューク大学でフレドリック・ジェイムソンに師事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
118
カミュの『異邦人』と『ペスト』は世界文学の傑作とされるが、舞台はアルジェリアでもフランス人植民者ばかり登場し多数派である原住民のアラブ人は出てこないか名前もない。貧困層出身でも植民地では特権階級の白人だったカミュにとり、アルジェリアはフランスのものという植民地主義は自明ではなかったかと著者は疑う。ただカミュは誰とも自由に付き合う反共産主義者であり、正義より母親を選ぶと述べたため、誰にも都合よく利用されているのだと。明確なソ連支持者サルトル批判の対照として称賛されたのなら、長年の愛読者としては複雑な思いだ。2025/07/18
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