出版社内容情報
第24回 中原中也賞受賞!
「学校、うん、教室にいるとぽつんと、
一つの島に一人ずつがいる気持ちになる、
それがきれいな島ならいいけれど。」
――ありきたりな日常に根ざし、その細部を見つめ、
次々とつむがれていった言葉。さまざまに色やかたちを変えていく、
詩の空間。中原中也賞受賞の第一詩集、二二編。
目次
川をすくう手
ぼくのビーム
はだしになってもないの、根
INRI
受け入れるだけの、周りをどんどん吸い込む体
大人だ、もうどうしようもない
安らかな着地
ムービング
どの表面も、反射する膜
熱帯鳥類館、内部
立国
発生と変身
光る川はそのまま、それで、これは流していいんだっけ
テンダー
バイバイ、グッドモーニング
川、腰までつかるほどの
ここ、ウーメラの砂漠
ダフネ
大丈夫、中空で飛ぶ
母国
する、されるユートピア
ニューワールド
著者等紹介
井戸川射子[イドガワイコ]
2018年第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。2019年同詩集にて第二四回中原中也賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
113
第1詩集。言葉一つ一つを丹念に味わうことの愉悦があった。ユニークな描写と思うが、そこからは可能な限り実体のない自分の心の表情を描こうとする気概を感じた。でも著者は「言葉はただのたとえ」なんて言ったりもする。既存の言葉に頼るのを著者は嫌がる。言葉にはまだ生まれていないものがあるはずと求めているのでは。言葉を上手に使いたいという著者の思いの根底には母への思慕を綴ることがあるのだと思う。穏やかなようで内なる思いの強さとしなやかさのある詩。水や光、それとも表紙絵(著者作)のマグマのようか。真摯であり、ユニーク。2023/04/28
ダイスケ
102
言葉の意味を理解しようとすると脳がこんがらがって、リズムだけで読もうとするとタイミングがズレるような印象で終わってしまいました。2023/06/20
ちぇけら
22
耳鳴りを聴きながら、心臓のよな赤い空にむかって産声あげ、光化学スモッグの警告音をかき消す。放課後うす汚れたバス停に、うす緑の月明かりが着色する。かつて生まれた光の筋を雨水がつたっていく、(連鎖は崩壊への最短距離だ)、愛はこれよりもずっと穢いのだろう。ぼくに許されなかったこと忘れたっていいよ、なんだかぼくは花火が見たいんだ、と言った、火薬の樽に火をつけて、思えば、それが愛のはじまりであったようなスナップ。切り割いた、散った三月の朝、旅立ち、ぼくらはみな孤児のように震えていて、あれがほんとうのしあわせだった。2020/09/21
とよぽん
22
井戸川射子さんの第一詩集。中原中也賞を受賞するが、最初は私家版で発行されたそうだ。散文詩、主語は「ぼく」の詩が多い。硬質で乾いた感じ、それでいて、どこか遠い視線、懐かしいような感じがした。この方の詩集、メモ帳に読みたい本として自分でメモしたのに、どこからどんな経緯で読みたいと思ったのか、思い出せない。もしかしたら、絵本「わたしのせいじゃない」の関連? わからない。2019/10/06
しゅん
15
病院が何度か登場し、その周囲の「僕」の感覚をあらわす言葉が流れていく。子供がみた「老い」の風景に思える。ユートピアをするという動詞感覚。2023/03/04