出版社内容情報
福嶋亮太[フクシマリョウタ]
内容説明
文学史に隠された遺産=亡霊をあざやかによみがえらせる、野心的試み。日本近代文学の真実。
目次
序章 文学史的不安
第1章 劇作家としての漱石―モダニズムとその変異
第2章 東洋的前衛―二つの近代の衝突
第3章 恋愛の牢獄、クィアの劇場
幕間 逃走路としての演劇―谷崎潤一郎から中上健次へ
第4章 地図制作者たち―紀行文のリアリズムと倫理
終章 観客―二〇世紀の紛争地帯
著者等紹介
福嶋亮大[フクシマリョウタ]
1981年、京都市生まれ。文芸評論家、中国文学者。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、立教大学文学部助教。近世からポストモダンに到る東アジアの社会的文脈を踏まえながら、文学にとどまらず日中のサブカルチャーや幅広いジャンルで批評活動を展開している。2014年に『復興文化論』(青土社)でサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mstr_kk
6
残念ながら、読むにたえない本でした。これ見よがしの知識が投入され、目がくらまされそうにはなりますが、そもそもの論理構築が甘すぎて、無意味なおしゃべりが延々とつづけられるだけになっています。まず根本的に、演劇とパフォーマンスと祝祭と身体性が、ゴチャゴチャに混同されています。演劇の本質を一度も問わないまま、「これも演劇っぽいよね」「これもだよね」とやっているからです。細かいところでも、概念の取り扱いがいちいちユルい。この本が「新しさ」を演じられているのだとしたら、概念をテキトーに用いてごまかしているせいです。2016/10/31
吉岡
4
一冊も読んでない作者論でもすんなり頭に入るくらい分かりやすく説明してくれている。もちろん読者の演劇的視点の獲得に重きを置いてるので当然かもしれないが、それでもとりわけ谷崎論は良かった。細雪を読んで近畿旅行行こうかなと、どこみち紀州を読んで新宮は行くつもりだったので。三島が人生を通して演劇的というのも面白い。腹に刃を入れた後にトカトントンでも鳴って自分を笑ってくれるような人物を少し想像してしまった笑2016/07/29
hiratax
1
もともと演劇に興味がないので「復興文化論」ほどの感銘はないんだけど、作者の射程範囲の広さに驚く。紹介される著作が有機的につながっているのもいい。佐藤優がいかに書名を並べてるだけかわかった。結論部で指摘している近代を、東洋的近世に拡張しものを考えては、という提案にはうなずける。だがそれを捉えるにはくずし字も漢文もできなければいけないわけで。邪な見方をすれば今私たちが捉える近代は特殊な訓練を受けずに、高校卒業程度の国語力でわかりうる日本語の範囲内でしかないの。視点を広げれば本書のように近代とサブカルが結びつく2016/08/25