内容説明
浮世絵を捨て写真を採用し始めたポスターから、幻の東京オリンピック・キャンペーン、そして国威発揚をあおる総力戦体制への編入まで、近代日本ポスターの錯綜の顛末を徹底して追い、活写する。可能性を信じ広告界の周辺に結集した技術者・職人・アーティストたちの、知られざる白熱のドラマ。図版500余点収録。
目次
第1部 ポスターは淡白に鑑賞する芸術ではない。メディアだ。(女優や芸者の死せる肖像―「美人画ポスター」批判;「商業美術」と「単化」デザイン―美人画ポスターから脱皮せよ)
第2部 転機:一九三〇年―雑誌『広告界』について(「レイアウト」って何だ?;文字は広告の主役だ―広告という媒体への目覚めと「文字」;広告に写真を使え!―ヨーロッパ前衛と広告)
第3部 広告近代化と総力戦(迷走する商業広告;総力戦と広告の現代化)
著者等紹介
竹内幸絵[タケウチユキエ]
神戸大学大学院国際文化学研究科修了、博士(学術)。専門は歴史社会学、広告史、デザイン史。現在大阪市立大学文学部非常勤講師、関西学院大学社会学部非常勤講師、サントリーホールディングス在籍。元サントリーミュージアム「天保山」学芸員。第17回鹿島美術財団賞優秀者(2010年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬき
2
広告表現史かぁ2012/04/17
今日子
0
ポスターが美人画一辺倒で、絵画のように吊り下げられて鑑賞されていた時代から、都市空間の変容も相まって広告としてのポスターの役割とそのための技術が徐々に認識されるようになった昭和初期〜戦中までの日本の広告デザイン史の変遷、またその背後の立役者たちが紹介されている。より抽象的で力強い単化のデザインや構成主義的なデザインは当初は新鮮だったが、やがて氾濫し、伸び悩んでいたのを、戦争を契機に強いメッセージをマスに訴えかける必要性が出てきたため、逆にその表現が高められていくのは興味深かった。2020/12/24