内容説明
20世紀最大の詩人パウル・ツェランとの波瀾に満ちた悲恋があまりにも有名な、オーストリア生まれの才媛バッハマン。新時代の到来を感性豊かに捉え、不条理の世界と真摯に向きあう―。ツェランとの「往復書簡」刊行を契機に、世界的注目を集める詩人の、全詩作を日本初公開。
目次
1 初期詩作品(“わたし”;心の動き―選集)
2 詩1948‐1953(〔夕べにわたしはわたしの母に問う〕;〔わたしたちは行く、塵にまみれた心をもって〕 ほか)
3 猶予された時(出港;イギリスとの別れ ほか)
4 大熊座の呼びかけ(遊びは終わりました;一つの国、一つの川そしていくつもの湖から ほか)
5 詩1957‐1961(親愛;〔この世代にはあなたたちは信仰を命ずるな〕 ほか)
6 詩1964‐1967(真に;ボヘミアは海辺にある ほか)
著者等紹介
バッハマン,インゲボルク[バッハマン,インゲボルク][Bachmann,Ingeborg]
1926‐73。オーストリア生まれの詩人・小説家。第1詩集『猶予された時』、第2詩集『大熊座への呼びかけ』によって、現代詩の伝統と革新を体現すると注目を浴びる。情熱的な人間愛と、失意による人間不信に引き裂かれる心、寄る辺ない現代人の心情を謳う
中村朝子[ナカムラアサコ]
上智大学文学部ドイツ文学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
9
私は詩を味わう感性というものをからっきし欠いているのでなにも語れないに等しいのだけれど、時に自らを痛めつけ時に世界に対する生々しい告発として終わるこの詩集を読めばその切実さに言葉を失ってしまう。インゲボルク・バッハマンの作品もまた不勉強にして『三十歳』しか読んだことはないのだけれど、あの著作にも通じる絞り抜かれた言葉で強烈なフレーズを並べ立てる作風は(当たり前だが)共通している。読みながらこれは辛いだろうな、と思ってしまった。書くのはきっと身を引き千切られるような体験だったのではないか、と。実に重苦しい本2016/07/04
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4
「来るのだ もっと過酷な日々が。/撤回されるまでは猶予された時が/水平線に見えてくる。」(「猶予された時」)2020/04/19
sk
4
ネリー・ザックスやツェランと通じるものは大きい。抽象的な語法や喩、イメージの使い方がこの時代のドイツ現代詩の典型のような感じ。だが、私は彼女の詩には乾いたエロスを割と感じる。身体的な身振りもけっこう見えやすい作品群だ。2016/01/24
兎乃
3
Du sollst ja nicht weinen,sagt eine Musik.Sonst Sagt Niemand Etwas..ツェランの恋人と紹介されることが多いけれど、バッハマンが好き。『詩作と思索、そして音楽―インゲボルク・バッハマンの作品、語った言葉、そして彼女を巡る様々なテクストの註釈の試み』2012/05/25
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