目次
序章 保護主義覚醒
第1章 リカードの罠
第2章 経済神学
第3章 崩れ落ちる自由貿易神話
第4章 産業政策のプラグマティズム1
第5章 産業政策のプラグマティズム2
第6章 自由貿易からの自由
著者等紹介
中野剛志[ナカノタケシ]
1971年、神奈川県生まれ。1996年、東京大学教養学部教養学科(国際関係論)を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。2000年より3年間、英エディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年同大学院より優等修士号取得。2003年同大学院在学中に書いた論文が、イギリス民族学会Nations and Nationalism Prizeを受賞。2005年大学院より博士号(社会科学)を取得。現在、経済産業省経済産業政策局新需要開拓・雇用創出担当参事官補佐(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夕刻
7
「…世界中の教養ある人々が長きに亘って信じて疑わない自由貿易の原則を真っ向から否定するという、とんでもない代物である。」(p226)とあるように、大学で国際経済学を学んでいる身としては信じがたい内容でした。貿易理論で主流派として知られているリカードの理論やH・O理論は致命的な過ちがあり、そのような古い理論は役に立たない、と主張する一方で、自由貿易を信条として保護貿易は議論さえ封殺するとする姿勢を厳しく批判する。2010/09/24
田山河雄
3
本書のあとがきに「保護主義を説得的に擁護できる議論が予想以上に存在し、自由貿易の原則を信じるに足る理論的根拠のついに見つからなかった」とあるが、恐らくはこれがご主張の要点なのでしょう。しかしそれは考えてみれば至極普通なのではなかろうか。関税も外国為替も或いはその他非関税障壁等も一方的な輸出入超過を和らげる目的があるのだから。余りにも極端な貿易黒赤字は自国や相手国の社会不安を煽るまでするべきでないとの平凡な結論に至るのではないか。その意味では新自由主義経済学の海を越えての産業移転も同じ様に望ましくはあるまい
大次郎
3
図◎自由貿易より保護主義による貿易の方が良いとわかった。僕にとっては馴染みのない分野であり速く読んだので細かいところまでは納得できていない。墨家の思想と似て利益の収奪を原則とせず、自国を育てる保護主義が良いなと思う。詳しく話し合う機会がある時にまた読み返したいです。2012/12/09
酉井舎
3
自由貿易に挑み、保護貿易を検討する。それは、主流派経済学のような合理主義から、状況に応じて判断するプラグマティズムで対応しなければならない。中野氏はあとがきで「世論の喧しきを憚らず、異端妄説の譏を恐るることなく、勇を振て我思う所の説を吐」いた甲斐があったというものである。と述べるほどに、勇気のある主張だった。後に、TPPに反対する言論活動を行う理由が、この本からも見えてくる。難解な内容かもしれないが、私は、主流派から異端と思われようが、意見を発する中野氏の分析に感服し納得している。2012/10/24
keepfine
2
プラグマティズムはあまりに当たり前のことを言っている。探求は仮説(=保証付きの言明可能性)を指し示すが、そこでは真理への到達が目的ではない。あくまで「展望的目的」を目指す。設定されるゴールは目的ではなく方向付けための手段。永遠に真理に辿り着かず、仮説→探求の絶えざる反復という具体的実践が政策。…というプラグマティズムの論理を合理主義的科学に対置する。2019/02/21