内容説明
ナチズムの悪夢を断ち切るために。反体制事件に連座し亡命先から祖国ドイツに帰還した作家ウルリッヒ。その身辺に次々と生起する暗殺未遂・テロリズム・爆破、そしてスパイとの情事―。強制収容所跡地の遺骨群の上に栄える新興住宅街は、何を夢見るのか。日常と非日常が交錯し断片と化した世界はどこに向かうのか―。ペン・フォークナー賞受賞の話題作。
著者等紹介
アビッシュ,ウォルター[アビッシュ,ウォルター][Abish,Walter]
1931~。オーストリア生まれのユダヤ系アメリカ作家。彫刻家で写真家の妻セシールと共にニューヨークを拠点に芸術活動を続ける。様々な文学表現を駆使して新しい文字芸術を作り出す、ポストモダン作家。都会的な洗練された感性とユーモア、リベラルなヒューマニストの成熟した知性で、暴力と優しさが併存する危うい文学世界を構築
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mill
1
「戦争はいけない」という言説がある。そして私たちはそれに同意する。しかしその言説に甘んじて、私たちはそこで思考停止をしてはいないか。 この作品では、戦争の記憶、ユダヤ人虐殺の記憶を風化させないために、作者(作者自身もユダヤ人)は、文学上の工夫を試みている。様々な「疑問」や「不自然さ」を示すが、それに対する作者の答えは示されていないのだ。それには作者の主張をあえて明示しない事によって、読者が思考停止するのを防ぐ狙いがある。「常に答えを問い続ける事」こそ、真の反戦の態度なのだ。 これは新しい戦争文学だと思う。
繻子
0
印象的なタイトルとあらすじに惹かれて購入。淡々と描かれ突然途切れるような短編が多く、淡々さが良かった。時代背景と作者の立場が作品に強く反映されているなぁと感じました。2015/01/17
コウ
0
とても印象的なタイトルです。淡々と描かれる戦争の記憶。そう、これは記憶を巡る、しかも二つに分かれた物語なのです。ベン・フォークナー賞受賞作品。★★★★☆2008/06/25