内容説明
ローマ帝国崩壊後の暗黒時代、西欧文明が壊滅の危機に瀕したとき、伝統の古典を書き継ぎ、伝えたのは、アイルランドの学僧たちだった。彼らが存在しなければ、ヨーロッパは書物のない世界となり、今日の文明も到来することはなかっただろう。アイルランド人はどのように文明を救ったか。
目次
序 歴史はどれくらい真実なのか
第1章 この世の終末―ローマ帝国はどのようにして滅亡したのか そしてなぜ
第2章 失われたもの―錯綜する古典の伝統
第3章 移りゆく闇の世界―神聖ではなかったアイルランド
第4章 遠方からの福音―最初の伝道者
第5章 堅固な光の世界―聖なるアイルランド
第6章 見つけだされたもの―アイルランド人はどのようにして文明を救ったか
第7章 世界の終わり―希望はあるのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nina
31
アイルランドにおけるケルト文明の話かと思いきや、蛮族ゲルマンの来襲で消滅の危機にあったローマの文字文化がアイルランドの修道士たちによって密かに守り伝えられ、写字生の手で複写された書物が後に大陸に逆輸入されたことの意義、ひいてはアイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックの偉大な功績なくしては現在のヨーロッパ文明は成らなかったであろうとの衝撃的な事実が述べられていた。情熱的アイルランド讃歌とゲルマン憎しの見下し節のギャップの激しさが気になるが、アイルランドの独自性について多くのことを知ることができた。2015/01/25
hitotoseno
5
キリスト教の聖人といったら君ら誰が思いつく? アウグスティヌス? トマス? ザビエル? まぁそんなところだろうな……でも、そいつらなんかよりもっと壮絶な人生を歩み、果敢な伝道を続け、今日のヨーロッパ文化を守ったパトリキウスっていうとてつもない聖人がいるんだぜ、というお話。辺境とされている土地が実のところ中心の文化の発展に寄与したという観点は今日ではありふれたものかもしれないが、アイルランドという固有名に執着すれば、20世紀最大の小説家ジェイムズ・ジョイスへと直結しうるラインが浮かび上がってくる。2016/03/02
AR読書記録
2
面白すぎる...! アイルランドといえば,辺境の,カトリックの島,ぐらいのイメージしか持っていなかったんだけれど,キリスト教の歴史においてこんな重要な役割を果たしていたなんて.学問書的な記述でなくて,写本の落書きにまで至るさまざまな記録(の断片)から,時代とキーパーソンたちを生き生きと描いているところに引き込まれる,という面白さもある.ヨーロッパの歴史,学校で習うくらいのものでは全く理解できるといえるものではない,と,またしみじみと感じる1冊でもあります.ところで,最後の謝辞にジャクリーンの名が...2012/08/05
ポルポ・ウィズ・バナナ
1
もし、キリスト教が、ローマ帝国下~崩壊後のヨーロッパで「のみ」伝承されていたとしたら、世界宗教にはなっていないだろうなあと思わざるをえない。キリスト教の「良き部分」には、アイルランドで熟成された「ケルト的」要素が相当入り込んでおり、それが逆輸入されて、本場(?)のものと混ざりあったものが、現在のキリスト教のベースとなっているといった印象。2012/01/26
しんかい32
1
中世初期アイルランド修道士たちについての面白い読み物。ただ、あまり知識を体系的に得られるような本ではない。アイルランドにやたらゴージャスな写本のある理由などがなんとなくわかった。神父が告白を聞いて秘密を守るというのもアイルランド発祥の習慣なんだって。2012/01/04
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