出版社内容情報
《内容》 中井久夫氏の著作集刊行以後の論文をほとんど網羅した待望の論文集。大幅な加筆・修正も施され、分裂病治療の実践がリアルに語られている。「『最終講義』補論」等、珠玉の論文が満載!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遠野
10
読み進むうちに中井先生の人柄にどんどん惹きつけられ、信頼のおける書き手に導かれて思考することのできる幸せを嚙み締める。精神科医に向けて書かれたものが多いが、それ以外の人間関係にも通じる示唆に富む内容で、とても面白い。分裂病親和的な人間が現代社会で生きていくことについてのヒントもあって、有難く読み終える。2015/12/12
fonfon
6
「加齢と精神科医」「外来治療」の項などは専門家でない一般読者にも読みやすい。臨界期の孤独、虚無感は、急性期よりいっそう激しい、という言葉がきになった。<回復への重要な寄与は「人づけ」と「タイミング」>この世ははかなく無常であってもどこか生きるに値するところがある、という実感が微かな人肌のようにして伝わるといいと思う。ほんとうにそう願う。モームの言葉「人を殺すのは記憶の重み」にひやりとする。モームはそういって90才で自殺したのだから。サリヴァンのVocal Psychotherapyという言葉も再三引用あり2011/07/16
Ken Aura
2
統合失調症の治療、さまざまな経過を辿る患者。実際に御自身で薬を飲まれての薬物療法論。脱工業化社会と精神健康、という社会学的論文。どれも素晴らしく、ひたすら感心しながら読み終えました。精神疾患や社会に対する洞察力、描写力は天才的で、いつも中井先生の本を読んだ後は色々分かったような気になる「中井症候群」に陥ってしまいます。読んでいる自分の不安や緊張もどことなくほぐれ、読後は何かずっと悩んでいたことがすっと解決したかのような清々しい気持ちになります。著作を通して中井先生の精神療法を受けているのかもしれませんね。2015/04/15
tamioar
0
一種類の特技は短期的には成功をもたらすが、長期的には脆さを呈す、と言う指摘に納得。2017/05/27