内容説明
『いま二センチ』は、『春の顕微鏡』に続く第五歌集である。二〇一二年から二〇一五年末までの四年間、三十六歳から四十歳の四八八首を収めた。二〇一三年の年明けに妊娠が分かり、八月の終わりに娘を出産した。待っていた子どもが生まれたことは、やはりとても嬉しく大きなことであった。本歌集は、ちょうどその変化の最後の時期にあたる。
目次
1(二〇一二年一月‐二〇一三年八月)(ひ、ふ、み;中途半端な;余白 ほか)
2(二〇一三年九月‐二〇一四年七月)(アコーディオンカーテン;あ音の明るさ;ミドリムシ ほか)
3(二〇一四年八月‐二〇一五年一二月)(閘門;慣らし保育;パラフィン紙 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
26
出産、子育て、仕事復帰、家庭といった女性ならではのモチーフを端正に詠まれる。理系の方の短歌作品は栗木京子さんも大西久美子さんもそうだけれど、モチーフに対して理性的で知的な作品を詠まれる方が多いと感じる。言葉に拘泥し過ぎないところが心地良い。ひとつ前の歌集「春の顕微鏡」もとても好きな歌集。手に入りにくい「北部キャンパスの日々」は岡山の古京文庫さんで購入した。他の作品や続きが読みたくなる歌人さん。2023/06/03
双海(ふたみ)
13
『春の顕微鏡』に続く第五歌集。「感情は水溶性か秋の日の川原にあればさらさらとして」「会わぬ間にいろいろなことありにけむそのいろいろの中に逝きたり」「重ねれば重ねるほどに白くなる光は春に体積をもつ」2024/03/07
yumicomachi
4
著者第五歌集。2012年から2015年末、36歳から40歳までの4年間の488首が収録されている。子どもを身ごもり、出産し、子育てがはじまる喜びと不安がうたわれ、研究者としての職業詠があり、社会詠があり、2010年に亡くなった母の不在や遺した言葉、その他の家族が詠まれる。そのどれもが有機的に関わり合い、一人の人間を感じさせる。〈お母さんですよと言えばお母さんになりゆくわれか腕まくりして〉〈『動物のお医者さん』の話の出来る人少なくなりてさびしいラボだ〉等。第28回若山牧水賞受賞歌集。2023年3月1日刊行。2024/07/04
たく
3
☆☆☆2024/04/24
仁藤
2
「どうしたのどうして泣くの日の暮れは栴檀の木もよろよろとして」 92点2024/11/09