出版社内容情報
アフガニスタン難民のサミと祖父の生きる術であり、心の拠り所だった楽器ルバーブが盗まれた! 買い戻すには1か月以内に700ドルが必要だ。サミは友だちの助けを借りて物々交換を始め、苦心惨憺する中で、祖父との関係、過去の出来事、失った家族のことを想う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
126
アフガニスタンから難民となってアメリカにたどり着いた少年と祖父。ヤングアダルト向けとは言え、変わってしまった自分の祖国を思い、現地での辛い経験からくるトラウマをかかえた難民の人達の状況は十分に伝わる。主人公が花火でパニックを起こすくだりで思ったこと。私は夜にうちへ車で帰る時に淀川の視界のいい橋を渡るのだが、その時に橋の向こうの山から飛行機が飛んできて段々と大きくなるのが見えると空襲みたいと思うのだ。また、センバツの時のサイレンの音が空襲警報みたいに聞こえるのだ。お年寄りの方はどうなのかしら。2019/09/03
chimako
93
読書感想文課題図書。生徒たちにはあまり馴染みのないアフガニスタンからの難民の話。父と母を爆撃で亡くした少年サミ。祖父と二人でアメリカに暮らす。祖父はアフガニスタンの民族楽器ルバーブの奏者。街頭の演奏で日々の糧を得ていたが、ある日そのルバーブが盗まれた。落ち込んでいた時クラスメイトのダンが声をかけてきた。ルバーブを取り戻す!自分の持っている物を交換しながら資金を貯めるサミ。いろいろな人の協力で取り戻すまであと一歩!タリバンの横暴、盗品と知って買い取る質屋なども挿入しながら友情と再生を描く。どこまで響くか。2020/07/05
☆よいこ
86
YA。アフガニスタンからアメリカに、難民としてやってきたサミとじじ。じじは伝統楽器ルバーブのプロ演奏家だったが、今では地下鉄構内でひっそりと演奏していた。しかし、ルバーブはサミの腕から乱暴に持ち逃げされてしまう。盗まれたルバーブはある楽器店で見つかるが、取り戻すためには700ドル必要だ。サミは友人ダンの手助けで、物々交換の取引を始める。▽アフガニスタンのこと、イスラムのこと、戦争のこと、難民のこと等、ニュースで見たり聞いた気になっていたが、なにも知らなかった。良本。おすすめします。2020/06/16
アクビちゃん@新潮部😻
67
【2020課題図書・中学生】あ〜、これは中学生と言わず、高校生にも大学生にも、読んで欲しい1冊。アフガニスタンの難民の男の子サミが、ジジが大切にしていた伝統楽器、ルバーブを盗まれてしまう。わらしべ長者のように、持っていたキーホルダーを壊れたiPodと交換し、友だちの力を借りながら、ルバーブを取り戻そうと奮闘する。11番目の取引後、サミがルバーブだけではなく、新しい人との結びつき、新しい歌と、なんと言っても新しい故郷を手にし安堵❣ 人の優しさ、思い遣りにサミと一緒にメソメソしちゃいました。2020/06/30
Willie the Wildcat
65
わらしべ長者の辿り着いた本質、「心」。転機は、心中を吐露した場面であり、決定打は他者(ダンやマリハ)の痛みを学んだ場面。前者は、自身に向き合うキッカケ、視野を広く周囲を見渡せるようになるキッカケ、そして本質への気付きのキッカケになった気がする。微かに残っていた自我の雲散霧消。贈り物は「涙」、グッとくる。一方、ピーターが直接・間接的に描写するのも「心」。一定のルール故の”退場処分”だが、ルール適用外で”退場”はない。読後に現実に引き戻される感。2022/11/09