内容説明
正体不明の“つなみ”が、悲しみだけを残していった―生々しい体感、慟哭と彷徨の日々、絶望から再起への想い。人類史上に残る千年災害の全体像、その広さと深さに迫る。
目次
TSUNAMI 大津波(大津波 ババのへそくり 泥の中―南三陸町志津川廻館(佐々木米子)
ここは津波常襲地―南三陸町戸倉字波伝谷(後藤一磨)
正座したままで逝った父、母、祖母―女川町桜ヶ丘(丹野秀子) ほか)
FUKUSHIMA 原発(福島第一原発に立ち向かう―福島第一原子力発電所(山下幹夫)
生まれた時から原発があった―大熊町(大川順子)
避難先も避難区域―大熊町熊三地区(佐久間和也) ほか)
MEGA EARTHQUAKE 巨大地震(ダム決壊、もうひとつの津波―藤沼湖須賀川市滝(松川美智夫)
青少年自然の家で再び震度7―栗原市花山字本沢沼山(佐藤敏幸)
新幹線のトンネルに一四時間閉じ込められる―秋田新幹線仙岩トンネル(佐々木透) ほか)
著者等紹介
金菱清[カネビシキヨシ]
1975年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部卒業。関西学院大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。環境社会学専攻、社会学博士。現在、東北学院大学教養学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃんみー
45
東日本大地震で被災した71人が綴ったあの日とその後。6年前に毎日流れていたニュース映像を思い出します。愛する家族を亡くしそれでも生きていかなくちゃいけない辛さは実感することはできませんが、その気持ちに寄り添うことができるように丁寧に読まさせていただきました。興味本位で読む人を排除するかのように写真が一切掲載されていないだけに、惨状を想像し被災された皆さんの気持ちに触れられたことは、自分本位ながら家族が普通に「いる」というありがたみを感じられたわけです。2017/05/15
takaC
41
購入して正解。素人手記と侮るなかれ。2012/09/23
きいち
33
必読の一冊。◇71人の話は、誰も誰とも似ていない。でもそれは、被災者一人ひとりに物語があるといった話ではなく、震災の記録プロジェクトの編集の力によるものだ。場所や属性、そして体験の内容、現地調査踏まえ適切な執筆者を探して依頼し、書き上げてもらい、やりとりをして本にする。執筆者には編者の金菱はじめ目の前で祖母を亡くしたゼミ生はじめメンバーの名前もあり、当事者による本なのだと思う。◇読み始めでわかるのはタイトルと場所、執筆者名のみ、他の情報がないところから理解をしていくプロセスは、聞く過程の疑似体験のような。2018/08/10
ゴロチビ
5
前半の津波被災者の42人の手記の後、一旦棚上げしていた。津波は天災だが原発事故は人災。後半はより重い気がして怖気付いていた。でも読んで良かった。故郷を追われ、暮らしの支えだった家畜を全頭処分、避難先を転々と。なのに避難先では加害者扱い。「私達は何か悪い事でもしたんだろうか。」の呟きに胸が詰まる。津波で失われた膨大な数の命。それに比べたら、命があるだけマシ、と心のどこかで思っていなかったか自分。目に見えない汚染、帰るに帰れない故郷。在るのに手が届かない。その精神的な痛み、辛さの片鱗を知ることが出来たと思う。2021/04/05
ゴロチビ
4
著者の名前は『呼びさまされる霊性の震災学』で記憶にあった。前半の津波部分約40人分を読んだのでひと区切りとする。以前、暮らしの手帳社でまとめた戦争の記憶文集を読んだ時を思い出す。普通の人々の手記が積み重なってジグソーパズルが描く景色のように大災害の全体像が見えて来る気がした。手記はみな同年の秋頃に書かれたもの。十年の節目に読むと生々しさが蘇る。メディアなどでは伝えない人間の醜い部分も率直に語られていてメディアの限界、偏向を逆に感じる。特に若い人の文章が、気持ちをありのまま伝えていて真実味があると思った。2021/03/12