開発の人類学―文化接合から翻訳的適応へ

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  • サイズ B6判/ページ数 284p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784788507203
  • NDC分類 332.06
  • Cコード C1039

出版社内容情報

 世界はいまや西欧で生まれた資本主義という「近代世界システム」に覆われ ようとしています。しかしミクロ的にはまったく違って見えることもありま す。本書は、オーストラリアとニューギニアの間にある、トレス海峡という 小さな社会の1960年代以降の変化をたどるフィールドワークです。真珠 採取から伊勢エビ漁への産業の変化を追いながら、政府主導の「開発」をど のように地元の人たちが「翻訳」して適応しているか、「墓石除幕式」とい うキリスト教への適応として生まれた葬送儀礼が、いかに土着の葬送儀礼を 「翻訳」したものであるか、その市場経済的意味などを、詳細に追跡・分析 して、当該社会の視点から見た新しい「開発の人類学」を提示します。

 私がトレス海峡社会のフィールドワークを通して感じとったことは、たとえどんなに長い期間、外部からの強力かつ広範に及ぶ生活環境への影響があっても、彼らの大半は彼らの世界でものを考えているし、彼らにとってはあくまで彼らの世界での存在のあり様や立場が重要であることに変わりはないということである。むろん、うわべの言説上は外部から来た私に、外部社会つまりオーストラリア白人社会の種々の制度や文化の影響を語っても、その行動を見れば、彼らの目はほとんど彼らの世界内部に向けられていることがわかる。彼等は第一義的にその社会内部の価値にもとづいて行動している。そして、その延長上で、外部からの包摂的な事象や制度に対して、内部の手持ちの類似の概念で「置き換えて」理解している。つまり、「翻訳=読み換え」的な変換を行って理解し、取り入れるのである。彼らは、レヴィ=ストロースの言及したプリコラージュ(器用仕事)的な変換としての対応を、内部の事象に限らず、外部の事象の理解や需要に際しても行っているのである。(「はじめに」より)

 ・「開発による伝統社会の変容という問題に人類学者が取り組んだ。実に興味のつきない本である。」(読売新聞 2000.8.20、広岡守穂氏評)
 ・「エコノミスト」2000.10.17、榊原英資氏評

内容説明

グローバリゼーションのなかの伝統文化。トレス海峡島嶼民は近代資本主義システムをどのように翻訳して新たな伝統文化を創出したか。内部のミクロな視点から描く動態人類学の試み。

目次

第1章 世界システムと人類学
第2章 トレス海峡・バドゥー島
第3章 伊勢エビ業の展開
第4章 ミドルマン―個人の戦略的適応
第5章 島の経済―オーストラリアの支配的経済制度に対する適応
第6章 墓石除幕式―「近代的包摂」に対する「翻訳的適応」
結論 伝統文化の持続と市場経済への翻訳的適応