出版社内容情報
記紀から現代文学まで,リアリズム小説から幻想文学,SFまで,日本文学の中に現われた女,子供,外国人,異人などの〈他者〉のディスコースを丹念にたどりつつ,「日本人には他者がいない」という定説を検証し,新たな日本人像を提示する。
自己と他者が相対的関係にあることは、いうまでもない。自己という意識がなければ、他者に対する意識はない。ある程度の自己の成熟がなければ、他者は視野に入ってこないだろう。すると、他者が論議されはじめたのは、自己の成熟を意味するのだろうか。欧米では自己の論議は出尽くした観があるが、日本ではやっととば口に辿り着いたばかりだというのにもう他者論がさかんになりつつある。青銅器時代を飛び越えて鉄器時代に突入した国のことだから、驚くべきことではないかもしれない。それに日本人の自己が西欧人のそれに比較して少々柔らかく、境界線にややぼやけたところがあるからといって、他者を論議できないということもないだろう。それなりに見合った他者像というものがあるかもしれないし、また西洋の他者のパラダイムだって日本文学に嵌めてみたらおもしろい結果がでないともかぎらない。(「はじめに」より)
書 評
「週刊ダイヤモンド」95.2.18 熊本功生氏評
産経新聞 95.7.23 特集「横光利一 再評価の意味」荒川洋治氏評
「壮大で現代的な意図」(「週刊読書人」98.2.10 書評拓植光彦氏評)
Ⅰ
はじめに (鶴田欣也)
「他者とは何か」と『日本文学における<他者>』との距離 (小谷野敦)
Ⅱ
日本文学における他者の系譜 (竹内信夫)
古典文学における他者 (神垣外憲一)
「愛」における他者の問題 (佐伯順子)
Ⅲ
技巧家という他者 (佐々木英昭)
『明暗』<対話>する他者 (池田美紀子)
泉鏡花における他者の馴致 (コーディ・ポールトン)
『遥拝隊長』考 (遠田勝)
Ⅳ
横光利一『純粋小説論』の内なる他者 (中村和恵)
鏡の砂漠 (スーザン・J・ネイピア)
他者としてのパリ (今橋映子)
Ⅴ
「わたし」と「かれ」のあいだ (榊敦子)
森瑶子における他者の変容 (萩原孝雄)
「他者」の世界に入るとき (テッド・グーセン)
人工的亡命文学の生成 (井上健)
他者、言語、制度 (三浦俊彦)
Ⅵ
<女>から<他者>へ (上野千鶴子)
あとがき (鶴田欣也)
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【関連書籍】
『 書物の日米関係 リテラシー史に向けて 』 和田敦彦著 (定価4935円 2007)
『 投機としての文学 』 紅野謙介著 (定価3990円 2003)
『 現代文学理論 』 土田知則ほか著 (定価2520円 1996)
内容説明
記紀から現代文学まで、リアリズム小説から幻想文学、SFまで、日本文学のなかに現われた女、子供、外国人、異人、内なる他者などの「他者」のディスコースを丹念にたどりつつ、「他者」のいない日本文学という定説を検証し、新たな日本人像を提示する。
目次
他者とは何か
日本文学における他者の系譜―擬態される「他者」の文化的位相
「技巧家」という他者―漱石文学のなかの女性
横光利一『純粋小説論』の内なる他者
「わたし」と「かれ」のあいだ―倉橋由美子にみる「他者」概念との戯れ
「女」から「他者へ」〔ほか〕
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- 和書
- 月明の魚 現代俳句選集