内容説明
孝標女は平安中期の女流歌人・作家。藤原摂関体制の華やかをよそに、ひっそりと個性的な生涯を過ごした。本書は気鋭の著者が、彼女の自叙伝的回想―更級日記を辿りながら、虚構と真実の狭間に散見する彼女の実体を凝視し、夢見がちな少女期から、厳しい現実に直面して変貌していく女の一生を追究!
目次
序章 孝標女の生い立ち
第1章 都への旅立ち―孝標女の少女時代
第2章 夢と現実の狭間で―孝標女の青春時代
第3章 里びたる心地に濃き掻練―孝標女の宮仕え
第4章 現世に身を委ねて―主婦としての自覚
第5章 憂愁の中で―孝標女の老年期
終章 孝標女の文学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うさえ
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冒頭部と「后の位も何にかはせむ」のくだりは、教科書にもよく採られる有名な一節だが、それ以外の箇所を含めて『更級日記』を通読することはなかなか難しい。本書は「日本の作家」シリーズの一冊だが、『更級』本文を参照しながら菅原孝標女の人生を辿りつつ、本文記述の裏に透けて見える作者の思いを考察しており、『更級日記』の入門書として読むこともできる。巻末の略年譜も詳細。作者の継母である上総大輔と、紫式部の娘である大弐三位は姻戚関係にあり、作者自身も祐子内親王の乳母として栄達に繋がる未来もあったのだ。2025/07/24
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- 和書
- 螢女 ハヤカワ文庫