感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
60
《春もまづしるくみゆるは音羽山峯の雪より出づる日の色》や《忘れめや葵を草に引き結びかりねの野ベの露の曙》など斎院だった作者にふさわしい歌が目を引く。藤原興風の《春霞色のちぐさに見えつるはたなびく山の花のかげかも》を本歌とする《花咲きし尾のへは知らず春霞ちぐさの色のきゆるころかな》では、千種の色を消すことによって山の桜への思いが追憶の切なさに変わっていく。《たたきつるくひなの音も更けにけり月のみ閉づる苔のとぼそに》や《山深み春とも知らぬ松の戸に絶え絶えかかる雪の玉水》など、タ行音の響きが心にしみこんでくる。2018/06/05
双海(ふたみ)
9
新古今和歌集随一の女流歌人である式子内親王の全歌を一般向けに注釈する。漢字を添え読みやすくした和歌、解釈、語釈。歌によっては本歌や参考も付記し、端的かつ確実に式子内親王の和歌を理解するための一書。奥野 陽子氏の全釈もあわせて読みたい。2023/09/30
カムラ
4
式子内親王の歌400首程度を総覧できる。もう1回味わいたいと感じたものに付箋を貼っていたら100枚以上消費してしまった。詩歌は基本的に綺麗なことばの塊ではあるけど「うわぁ、なんだこの綺麗な響き&世界観は…」と思い知らされることが多く、やっぱり力のある歌人だったんだなと再認識。語句解説に「他に類例のない表現」「独自のもの」みたいなことが書かれていることが多くて、『自分の世界を持っていて世俗と少し距離を置いた、強さを秘めた隠棲歌人』像が見えた。好きな和歌が多すぎてメモで残しておく数首をどうしようか迷ってしまう2024/06/02
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