皮膚心療内科

皮膚心療内科

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  • サイズ B5判/ページ数 281p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784787812902
  • NDC分類 494.8
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》 文
 EBM全盛時代の皮膚科診療にあっても,依然として渇望されている
スキルが“皮膚科医の癒し”である.皮膚は目にみえ,手で触れる
ことができるがゆえに,心の傷と結びつきやすい.従来皮膚科医は,
生物学としての皮膚科学を習得し,科学的な治療を心掛けてきたが,
そこに欠落していたのが心の問題であることに気づかされたのはア
トピー性皮膚炎をめぐる混乱のなかであった.ストレス社会への変
容のなかで,皮膚疾患における心理的側面の増加と心療内科の必要
性を日常診療で痛感するようになった皮膚科医も多いはずである.
しかし残念ながら,多くの皮膚科医は心療内科のトレーニングを受
けていない.そのため,時には狼狽え,時には高圧的な態度で対応
するが,そのいずれもが患者さんの癒しにはならない.
 すべての皮膚疾患に心の受傷を伴うことは,容易に想像できる.
たとえば顔に“せつ”ができただけでも,人にみられまいと視線を
そらしたり,行動が消極的になることは皮膚科医自身の罹患経験か
らでも理解できよう.皮膚疾患の患者さんは常時このようなトラウ
マを抱えていることを銘記すべきである.皮膚疾患が慢性であれば,
さらにストレスを感じ続けることになる.この心理的側面を理解せ
ずに,皮膚科的治療を継続するだけでは,完璧な皮膚科診療とはな
らない.患者さんの心のすき間を埋めるようなケアが求められるの
である.
 心療内科における診療の基本は患者さんの訴えに傾聴し,受容・
共感したうえで良好な医師-患者関係を構築し,治療的アプローチを
開始することである.これは身体の問題に加えて心の問題も考慮し
ようという姿勢があれば,誰にでも可能なスキルである.本書では,
心療内科的な側面が指摘される皮膚疾患について,心療内科医から
の助言を仰ぐ形でバーチャルクリニックを展開するような構成とし
た.さらに,一歩進んで心理テストや抗不安薬,睡眠薬,抗うつ薬
の使用までも視野に入れた皮膚科診療の実際についても言及した.
本書を通して,少しでも多くの皮膚科医が皮膚心療内科の達人とな
り,一人でも多くの皮膚疾患患者さんに癒しをもたらすことができ
れば編者として望外の喜びである.
2004年初春
宮地良樹

あとがき
 皮膚疾患には,慢性の疾患が多い.これらの疾患の発症や経過に
は心理・社会的要因が大きく関与している.心理的要因と身体疾患
との心身相関については科学的にもかなり明らかにされてきている.
ところで,これらの皮膚疾患の実際の診療には一人で苦労されてい
ることが多いと思われる.そこで,宮地教授と話し合って皮膚科と
心療内科の双方から診療経験についてまとめた本ができると皮膚疾
患の患者さんの診療に役立つのではないかということになり,本書
をつくることになった.本書はいろいろな皮膚疾患について皮膚科
医と心療内科医が共同執筆したはじめてのものである.そして,本
書のタイトルは『皮膚心療内科』となった.各皮膚疾患について皮
膚科(時には小児科)からと心療内科からのコメント,心療内科か
らの症例呈示が書かれており,大変興味深く読みやすいものとなっ
ている.治療者側のちょっとした配慮や工夫により患者さんの病状
や治療へのコンプライアンスは改善する.これらの具体的な対応の
仕方が書かれている.これらの対応の仕方や向精神薬などの薬物療
法の使い方はそのほかの疾患の治療にも応用される.
 本書は皮膚科医,心療内科医のみならず,プライマリケア医にも
役立つものと思われる.患者さんのQOLをあげるためにも大変有益で
ある.多くの方に是非読んでいただきたい.
 最後に,本書の執筆者,ならびに本書ができあがるまでにいろい
ろととりまとめにご尽力頂いた診断と治療社の小岡明裕氏に厚く御
礼申しあげる.
2004年2月
久保千春    

《目次》
筆者一覧
序  文
あとがき
Part A 総論
 1 対談――皮膚心療内科を考える
 2 心療内科からみた皮膚疾患
 3 皮膚科医からみた皮膚疾患の心身医学的側面
Part B 各論
 1 アトピー性皮膚炎 
  1-1 アトピー性皮膚炎――ステロイド忌避
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
  1-2 アトピー性皮膚炎――ひきこもり
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
  1-3 アトピー性皮膚炎――民間療法と心身医学
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
  1-4 アトピー性皮膚炎――母子関係
   A 小児科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
  1-5 アトピー性皮膚炎――心因性破(小児)
   A 小児科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
  1-6 アトピー性皮膚炎――嗜癖としての破行動(成人)
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
  1-7 アトピー性皮膚炎――食物アレルギー
   A 小児科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 2 円形脱毛症 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 3 トリコチロマニア 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 4 慢性蕁麻疹 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 5 乾  癬 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 6 多汗症 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 7 にきび 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 8 ヘルペス 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 9 自傷性皮膚炎 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 10 皮膚寄生虫症妄想 
   A 皮膚科から
   B 精神科から
   C 皮膚科からの症例呈示
 11 自己臭症(腋臭症) 
   A 形成外科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 12 疾病恐怖 
   A 皮膚科から
   B 精神科からのコメント
   C 精神科からの症例呈示
 13 皮膚感覚異常症 
   A 皮膚科から
   B 心療内科的視点からのコメント
   C 皮膚科からの症例呈示
 14 爪噛み,舌なめずり,指しゃぶり 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 15 アカツキ病 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
 16 香りとストレス――Topics 
   A 皮膚科から
   B 心療内科からのコメント
   C 心療内科からの症例呈示
Part C 付録
 1 皮膚科医,内科医も安心して使える,抗不安薬,睡眠薬,抗うつ薬
Part D 索引
 和文索引
 欧文索引