出版社内容情報
《内容》
編集の序
萩原弘一
医療は社会と密接に関連しており,その様相は国や地域によって
全く異なる.
医療の在り方は,その社会固有の制度,文化,慣習に影響されざ
るを得ない.それ故,教科書には社会的な面を大きく盛り込むべき
ではないかと考えていた.しばらく海外に居たため「循環器研修医
ノート」の発行を知らず,本書の依頼を受けてから初めてそれを読
んでみた.そこには,社会的な面を大きく取り上げた,私の思い描
いていた教科書があった.
またそれと共に,呼吸器を学んでいく上で必要となる画像診断,
臨床腫瘍学,さらに呼吸器外科,膠原病等々の,隣接科のエッセン
スを賄ってくれる教科書,日常診療のポケットブック的なリファレ
ンスとなる携帯可能な教科書も思い描いていた.これらを全て盛り
込んだ教科書の作成を決意し,監修者の快諾を得た.ここで出版社
から,執筆は若い医療者にお願いし,実際的な現場の知識を盛り込
んで欲しいという強い要請があった.これには私も大賛成だった.
本書を作成するに当たり,以下の事項を目標とした.
呼吸器学の知識の提供
「社会の中に存在する医療」の理解に必要な知識の提供
呼吸器診療に密接に関連する隣接科の知識の提供
ポケットブック的なリファレンスの提供
医療現場に根ざした実際的な知識の提供
上記事項を,図表を多用して実現
執筆陣は,主に30代半ばから40代半ばの第一線で活躍中の医療者
に依頼した.原稿はe-mailで入稿していただき,編者からの質問,
筆者からの追加記載など,e-mailで連絡を取り合いながら最終原稿
を完成させて行った.電子入稿であることを利用し,写真のトリミ
ング,図表のイラスト化,ページ組みなど本来は出版社で行う作業
を,編者らのコンピュータで行い,完成したDTP用ファイルを出版社
にお渡しした.編者らの意向を少しでも多く,最終的な印刷物に反
映させたいという意図であったが,これが成功しているか否かは読
者の判断を仰ぎたい.
でき上がったものを見ると,教科書一冊分の内容を丸ごと詰め込
んで下さった小野修一氏の画像診断の項を始めとして力作ぞろいで,
各筆者の御尽力に頭の下る思いである.図表も,写真・イラストが
約700,表が200余と,700ページの本としては破格の数となった.
研修医の人たちが実際に医療現場で必要とする事項を,その必要と
する割合のまま縮小して,教科書にできたのではないかと思うと共
に,思い描いていた教科書にある程度近いものができたのではない
かと安堵している.
社会的な面の一つとして,日本の各地で医療を行っている医療者
の声を,コラムとして多く取り上げたいとも思っていた.これだけ
は不十分で,次の機会への宿題としたい.
《目次》
執筆者一覧
監修の序…………………………………………………………永井良三
編集の序…………………………………………………………萩原弘一
第1章 図表集
[1]解剖学・組織学
胸部大血管
気管支
肺区域
肺組織
[2]病理学
悪性新生物
肺癌
胸腺腫,胸腺癌
悪性中皮腫
びまん性肺疾患
[3]正常CT像
頭部
体幹
肺野
[4]気管支鏡内腔所見(正常像)
[5]各種疾患の臨床分類・病期分類
Performance Status,Hugh-Jones分類
NYHA心機能分類,Borg(ボルグ)scale
肺癌の病期分類
肺・縦隔のリンパ節番号
胸腺腫・中皮腫の臨床病期分類
学会分類(日本結核病学会病型分類)
ツベルクリン反応判定基準,結核化学予防適応基準
じん肺管理区分
[6]膠原病・血管炎関連疾患の診断基準・分類基準
関節リウマチ,皮膚筋炎/多発性筋炎診断基準
SLE分類基準,Sjogren症候群診断基準
混合性結合組織病(MCTD)診断の手引き
結節性多発動脈炎(古典的PN)診断基準
顕微鏡的多発血管炎
(Microscopic polyangiitis:MPA)診断基準
Wegener肉芽腫症診断基準
アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)診断基準
強皮症診断基準
[7]呼吸機能障害者の等級表
障害等級,認定基準
[8]介護保険
要介護度,障害老人の日常生活の自立度
痴呆老人の日常生活の自立度
[9]呼吸器で頻用される薬剤
ステロイド
気管支拡張剤
抗コリン剤
抗菌薬
抗結核薬
免疫抑制剤
麻薬
[10]抗癌剤
抗癌剤の種類
抗癌剤効果判定
副作用表
体表面積表
[11]呼吸器で使用される計算式
第2章 呼吸器緊急処置クイックリファレンス
第1項 気管支喘息発作
第2項 呼吸停止・心停止
第3項 緊急処置が終わったら
第4項 各種疾患への対処
第3章 呼吸器内科超初心者入門編
第4章 医療と社会
第1項 医療保険,医療補助
[1]医療保険制度
[2]保険の査定
第2項 呼吸器診療と社会
[1]喫煙と呼吸器疾患
[2]輸入感染症
[3]バイオテロリズム対策
第3項 医師の職場環境整備
[1]呼吸器内科医として働く女性として
[2]研修医をめぐる問題
良い臨床研修病院とは
研修医と自殺
臨床研修制度へのコメント
されど楽しき研修の日々
自分の身は自分で守れ
新しい制度で研修する医師たちに期待する
第5章 病院の中で
第1項 チーム医療
[1]医師間の連携
研修医と指導医
呼吸器合同カンファレンス
病理医との連携
[2]看護師との連携
呼吸器外来
呼吸器病棟
[3]薬剤師との連携
[4]呼吸療法認定士との連携
[5]臨床工学技士(CE)との連携
[6]臨床検査技師との連携
第2項 コンピュータオーダリングの功罪
第3項 医療事故の予防と対応
[1]医療事故をめぐる法的規律
[2]研修医の当直時の注意点
[3]インシデントレポート
[4]医療事故への対応
[5]医師賠償責任保険
[6]医療従事者に対するケア
精神的ケア
肉体的ケア
第4項 院内感染対策
第5項 患者および家族への説明
第6項 書類
第6章 患者さんを前にして
第1項 外国人患者への対応
[1]呼吸器科に必要な国際医学の知識
[2]英語による診察
[3]英文診療録の書き方
[4]英文による診断書と紹介状の書き方
[5]不法滞在者/保険非加入者の診療
第2項 各種の症状への対応
[1]咳,痰
[2]呼吸困難,息切れ
[3]胸痛,胸部圧迫感
[4]動悸,心悸亢進
第7章 検査
第1項 画像
[1]胸部X線
[2]胸部CT
[3]胸部MRI
[4]核医学検査
第2項 血液ガス検査
第3項 呼吸機能検査
第4項 胸水検査
第5項 気管支鏡検査
第6項 各種生検手技
[1]CTガイド下針生検
[2]エコーガイド下針生検
[3]胸膜生検
[4]生検所見の解釈
第8章 処置,治療法
第1項 基本的外科手技
第2項 吸引
第3項 酸素投与
第4項 吸入療法
第5項 気胸,胸水への対応
第6項 呼吸リハビリテーション
第7項 人工呼吸器装着
第8項 在宅人工呼吸療法
第9項 在宅酸素療法
第10項 緩和医療
第9章 特別な注意を要する患者グループ
第1項 小児と呼吸器疾患
[1]小児の気道奇形
[2]小児の呼吸器疾患
第2項 妊婦と呼吸器疾患
第3項 老人と呼吸器疾患
第4項 合併症のある患者と呼吸器病
[1]循環器病患者
[2]糖尿病患者
[3]腎機能障害患者
第5項 免疫不全患者
第10章 各疾患のみかたと対応
第1項 呼吸不全,心不全
[1]呼吸不全
[2]右心不全,肺性心
第2項 肺炎,気道感染症
[1]急性上気道炎,下気道炎
[2]市中肺炎
[3]院内肺炎(免疫不全のない場合)
[4]院内肺炎(免疫不全状態のある場合)
[5]起炎菌別の肺炎の特徴
[6]肺化膿症
[7]SARS(重症急性呼吸器症候群)
[8]肺結核症
[9]非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)
[10]肺真菌症
第3項 慢性気道炎症を原因とする疾患
[1]気管支喘息
[2]COPD
[3]気管支拡張症
[4]嚢胞性肺疾患
[5]副鼻腔気管支症候群・びまん性汎細気管支炎(DPB)
第4項 腫瘍性疾患
[1]原発性肺癌
[2]転移性肺腫瘍
[3]まれな肺腫瘍
[4]縦隔腫瘍
[5]胸膜腫瘍
第5項 間質性肺疾患
[1]特発性間質性肺炎(IIP)
[2]薬剤性肺障害
[3]放射線肺炎
[4]膠原病・血管炎と肺病変
第6項 免疫系が深く関与する肺疾患
[1]過敏性肺炎
[2]サルコイドーシス
[3]好酸球性肺炎
[4]アレルギー性気管支肺真菌症
第7項 特殊な肺疾患
[1]Goodpasture症候群
[2]肺リンパ脈管筋腫症
[3]肺ランゲルハンス組織球症
[4]リンパ増殖性肺疾患
[5]アミロイドーシス
[6]肺胞蛋白症
[7]再発性多発性軟骨炎
[8]肺胞微石症
第8項 職業性肺疾患
第9項 換気の異常と睡眠呼吸障害
[1]肺胞低換気症候群
[2]過換気症候群
[3](閉塞型)睡眠時無呼吸症候群
第10項 肺高血圧を来たす疾患
[1]肺血栓塞栓症
[2]原発性肺高血圧症
[3]膠原病による肺高血圧症
第11項 肺血管の交通異常
[1]肺動静脈瘻
[2]肺分画症
第12項 胸膜疾患
[1]気胸
[2]胸水
第11章 呼吸器外科
第1項 基本的呼吸器外科手技
[1]縦隔鏡
[2]開胸法
第2項 呼吸器外科手術麻酔
第3項 代表的疾患の手術適応・術式・術後管理
[1]肺癌
肺切除術
術前評価と機能的適応
術後管理と合併症
経過観察法
病期上の適応と手術成績
Photodynamic therapy(PDT)
[2]転移性肺腫瘍
[3]自然気胸
第4項 肺移植
索 引
和文索引
欧文索引
コラム
内容説明
研修医教育に必要なのは、独自に奥義をきわめることではなく、医師としての基本をしっかり教育することであるのはいうまでもない。本書は、このような考え方に基づき、出版されたものである。本書は、研修カリキュラムの中でも重要な領域である呼吸器疾患の研修医ノートであり、多くの図表や診断基準、基本的考え方が現場の視点から要領よくまとめられている。
目次
第1章 図表集
第2章 呼吸器緊急処置クイックリファレンス
第3章 呼吸器内科超初心者入門編
第4章 医療と社会
第5章 病院の中で
第6章 患者さんを前にして
第7章 検査
第8章 処置、治療法
第9章 特別な注意を要する患者グループ
第10章 各疾患のみかたと対応
第11章 呼吸器外科
著者等紹介
永井良三[ナガイリョウゾウ]
東京大学教授
萩原弘一[ハギワラコウイチ]
埼玉医科大学教授
山洞善恒[サンドウヨシチカ]
群馬大学呼吸器・アレルギー内科
徳江豊[トクエユタカ]
東北大学遺伝子・呼吸器内科
臼井一裕[ウスイカズヒロ]
NTT東日本関東病院呼吸器科・肺外科
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。