内容説明
選管を制する者が、選挙を制する―津軽の激烈な民俗選挙に翻弄され、大地主の父祖累代の富を蕩尽しつくした太宰治の長兄、津島文治。一方、義理と贈与と相互扶助の甲州選挙を身をもって生きた政界のドン、金丸信。カネと盲動、中傷と謀略が渦巻く、津軽と甲州の選挙祭りが行きついた対照的な悲喜劇。そのゆくてに、ありうべきポスト近代選挙を模索する。
目次
選挙楽しや牛馬にゆられ
津軽と甲州―その気質
津軽選挙の発生―金木町長選不正開票事件
二人町長と代理戦争―鯵ヶ沢選挙と大泉村長選
出稼ぎと行商―不在者投票
神仏の力と選挙タタリ
カネの力と悪銭
飲食の力と食物禁忌
無尽と葬式
村八分と地域ぐるみ
オヤコ選挙と骨肉の戦い
口碑と文芸
二人の政治家―津島文治と金丸信
民俗選挙のゆくえ―柳田国男をめぐって
著者等紹介
杉本仁[スギモトジン]
1947年山梨県に生まれる。青山学院大学を経て、同大学院修士課程修了。柳田国男研究会会員。都立高校教諭を経て、2012年~2017年都留文科大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
65
衆院選の前日に読了。政治はマツリゴトとも言われる。そういえば選挙前のあのどこか浮ついた空気には祭りと共通するようにも思えるなあ。というわけで選挙と民俗社会の関係を論じた一冊。地方の選挙、津軽と甲州の選挙戦を論じているのだが、地方の伝統から津軽は血縁によって甲州は地縁によって選挙戦が展開されているというのは面白い指摘。昭和中期の事例が多いので、公選法?何それ?的な事例が多く面白く、選挙という近代の産物の中にも土俗が息づいているのを確認できただけでも読んで良かった。現在の選挙にはない熱気みたいなのもあるし。2021/10/30
フクロウ
3
選挙を民俗学の観点から説明していく本。大塚英志の啓蒙家たる柳田国男像(選挙については群批判と個人の強調)に反対し、むしろ選挙の熱気、群れの肯定の要素こそ重要と再定位する。①神事で、②時間的区切り目、③参加者の精神的高揚感を醸し出す(転じて、暴力性)、④富の消費という「祭り」の要素が「選挙」にも通ずるという分析は面白いし、選挙の熱気がなく有権者の関心も低い現況と、買収饗応怪文書で彩られさまざまな問題がありつつも熱狂に彩られた戦後初期の選挙と、どちらがいいかは微妙である。いいとこどりができればいいが。2025/05/05
tkm66
1
・・うーむ、惜しい!これだけ資料価値がある興味深いエピソードを満載しながら、この纏まりの無さ・読み辛さ!公式的フィニッシュ笑!誰かアドバイスを出来なかったのかなあ。2024/05/01
1131you
1
水曜日のダウンタウンを見て②。予想よりかなり面白かった。選挙を政治や行政でなく民俗学から眺めるという新しい視点。柳田國男研究会会員だけあって民俗学の資料は多岐に渡り、言及も細部に渡る(これは選挙に関係あるのだろうかという所まで)。出典もわかりやすく興味深い記述の一次資料にあたりやすい。大量の参考文献から面白そうなのをピックアップする作業が待っている幸せ2023/08/14
睡眠学習
0
伝統的に過激な選挙戦が繰り広げられた津軽選挙と甲州選挙の共通点と相違点を民俗学的に考察した一冊。小選挙区制になってから大したことなくなったと批判している筆者には違和感を覚える2018/03/20