内容説明
信州は霧ヶ峰の南麓、正面に八ヶ岳連峰を見渡す棚畑遺跡で、素晴らしい造形美の大型土偶がみつかった。縄文時代の遺物で初めて国宝となったこの「縄文ビーナス」は、何のために作られたのか。縄文王国と称されるほど繁栄した縄文中期集落の探究からその謎に迫る。
目次
第1章 縄文ビーナスの発見(夕日に照らされた土偶;豊饒の女性像;いつ、何のために作られたのか?)
第2章 縄文文化繁栄の大地(八ヶ岳山麓「縄文王国」;棚畑遺跡の発掘;二つの環状集落)
第3章 黒曜石を求めて(黒曜石の道を探ろう;黒曜石原産地と麓の集落;黒曜石の採取・搬出と石器の製作)
第4章 縄文ビーナスのまつり(縄文人の願い;集いのシンボル)
第5章 縄文人のこころを伝える(国宝選定と世界への発信;縄文プロジェクト構想)
著者等紹介
鵜飼幸雄[ウカイユキオ]
1954年、長野県茅野市生まれ。立正大学文学部史学科考古学専攻卒業。現在、茅野市尖石縄文考古館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケロリーヌ@ベルばら同盟
58
山の端に落ちかかった高原の太陽が、浅い土壙の底に横たわる大型土偶を照らす。ハート形に縁取られた頭部、乳房と丸く突き出した下腹、広い腰と豊かな臀部を太い円錐台状の脚部が支える安定感のある造形は、雲母を多量に含んだ粘土で表面を覆われ、西日を浴びてしっとりと光を放つ…。長野県茅野市棚畑遺跡から四千年余りの時を経て、完璧な形で出土し、縄文時代の遺物として最初の国宝に選定された「縄文のビーナス」は何のために作られたのか。遺跡と遺物から縄文時代の人々の生活を考察し、子孫繁栄、豊穣への祈りを感じさせる像の謎に迫る良書。2023/06/03
月をみるもの
12
縄文ビーナスの話は最初と最後にちょろっと出てくるだけで、メインは棚畑遺跡の話。山で採れる黒曜石が、どのように麓の村に集積され、そこから全国へどう広まっていったのか。 縄文中期にこの地域こそが列島の交易の中心であり、女神の高度な造形はその繁栄の反映なのだ。2023/05/12
うしうし
1
・縄文ビーナスは、縄文時代中期後半狢沢(むじなざわ)式期の所産。環状集落の広場に設けられた土コウに、埋葬に関連して埋能された。・黒曜石集積遺構の性格については、黒曜石貯蔵跡と考える説(長崎元廣)と祭祀的様相と考える説(筆者)がある(p69)。・棚畑遺跡に縄文ビーナスが生まれたのは、黒曜石集散地での広域な流通拠点であった背景が考えられる(p74)。 2017/12/17
arere
1
キュートな土偶。妊婦さんらしく、お腹がまるっとしていて、お尻が出ているのも可愛らしい。あたまは渦巻きヘアー。 この国宝となった通称縄文ヴィーナスの出土した長野県・棚畑遺跡は、黒曜石の取れる霧ヶ峰、和田峠に近く、交易の要衝。さらに御柱祭で有名な諏訪大社に至近。 縄文時代中期という、もっとも華やかな時代にうまれた土偶の謎に迫る。2016/10/07