内容説明
北海道・二風谷の山ぎわの一角にある伝統的な藁葺きのチセ(家)で、アイヌ女性アシリレラさんとともに共同生活を送る老若男女。20年間にわたって二風谷に通い続け、アイヌ民族の精神の深部を親密な眼差しでとらえた写真と、アシリレラさんのことばのコラボレーション。
著者等紹介
宇井眞紀子[ウイマキコ]
1960年千葉県生まれ。写真家。1983年武蔵野美術大学卒業。1985年日本写真芸術専門学校卒業。樋口健二氏に師事、写真家としてフリーランスで活動を開始。1992年よりアイヌ民族の子連れ取材を始める。日本写真家協会会員。日本写真芸術専門学校講師、武蔵野美術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
52
「アイヌときどき日本人」という本も出している写真家・宇井さんが、現代を生きるアイヌ人・アシリレラ(アイヌ名。意味は「新しい風」。日本名・山道康子)さんを追いかけた写真集。アシリレラさんは、苫小牧から日高本線で1時間のところにある二風谷の生まれ(萱野茂さんと同じ)。その地で、20数人と何軒かのチセ(家)でアイヌ式(=アイヌ語)の共同生活を送っている。全国から居場所を求め、アイヌ文化に惹かれ集まった人々。何人もの里子。東京住まいの宇井さんが、自分の娘と何十回も東京=二風谷を往復して二風谷の生活を記録した。2015/04/23
とよぽん
43
北海道二風谷(にぶたに)に生まれ、アイヌの文化を大切にしながら共同生活を送るアシリレラ(新しい風、という意味)さん。日本名、山道康子さん1946年生まれ。表紙の写真は慈母のよう。世界の先住民族と交流する姿は、童女のように楽しそう。ダム建設反対抗議運動をしている時は、闘士の厳しさ。二風谷で受け継がれているアイヌ民族の文化を、ずっと守り続けていけるように祈りたい。そのためには、何をすればいいのだろう? この写真集を撮影した宇井眞紀子さんの、アシリレラさんへの敬慕の気持ちが全ページから伝わってきた。2020/06/03
ちえ
41
平取町二風谷で共同生活を営むアシリレラさん。亡くなったご主人の故郷である韓国や、ネイティブアメリカン、タスマニアアボリジニ等様々な場所を訪れ、人々と繋がりを持っていく姿は明るく力強くて子供たちや若者たちへの表情は優しい。アイヌの人々の生活、生き方をカメラで追ってきた宇井さんの本は他にも読みたい。以前隣の町に3年間住んでいたことがある。この本の出版と同じ時期だが、アシリレラさんのことは全く知らなかった。二風谷ダムとの関連で地元では触れられなかったのかと思ったり。2022/12/11
kaizen@名古屋de朝活読書会
40
#感想歌 アシリ・レラ新しい風生活と世界の少数原住民と。 生活と風習中心写真集生きていること優しさ厳しさ 2016/11/26
けんとまん1007
24
痛烈な一文があった。人間は自然の一部であるのだから「自然保護」などというのはおこがましいのだという意味合いの一文。そのとおりで、そこには自然をコントロールできるものであるという驕りがあるのだということ。感謝し敬うことを忘れたものには、必然的にそうなってしまうのだろう。アイヌに限らず、先住民族(という言葉も好きではないが)の暮らしには「営み」があると思う。連綿と続く流れの中の一部、今であるということ。それにしても、何と言っていいのか、息遣いが聴こえてきそうな1冊だ。2015/05/04