出版社内容情報
大正期から昭和初期のプロレタリア文学運動は労働者階級の現実を描く文学実践だが、そのジェンダー構造については十分に問われてきたとはいえない。プロレタリア文学をジェンダーというレンズを通してみたとき、階級と性にはどのような関係性が現れるのだろうか。
小林多喜二や徳永直、葉山嘉樹、佐多稲子、吉屋信子、山川菊栄など、大正から昭和初期の日本のプロレタリア文学を中心に、ジェンダー批評の観点からその実践を読み解く。弱者が権利を求める階級闘争の渦中でさえ、周縁化されたり、ケアとしての役割を求められたりする女性の姿を切り取る文学作品からは、階級闘争におけるジェンダー問題にとどまらず、「階級闘争自体のジェンダー化」というべき複合的な課題がみえてくる。
「階級」「労働運動」という論点とジェンダーやセクシュアリティ、さらに民族やコロニアリズムなどの論点の交差=インターセクショナリティにも着目して、プロレタリア文学が内包する問題と闘争の可能性を描き出す。
内容説明
階級という論点はいかにジェンダー化していたのか。大正から昭和初期のプロレタリア文学をジェンダーの観点から読み解き、「階級闘争におけるインターセクショナリティ」を浮かび上がらせる。
目次
第1部 プロレタリア文学場におけるジェンダーとセクシュアリティ(愛情の問題論―徳永直「『赤い恋』以上」;階層構造としてのハウスキーパー―階級闘争のなかの身分制;プロレタリア文学における「金」と「救援」のジェンダー・ポリティクス―「現代日本文学全集」第六十二篇『プロレタリア文学集』にみるナラティブ構成)
第2部 女性表象のインターセクショナリティ(女性表象の「輪郭」をたどること―山川菊栄「石炭がら」を起点として;メディアとしての身体―葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」の女性表象;吉屋信子の大衆小説におけるプロレタリア運動のジェンダーとセクシュアリティ―「読売新聞」連載小説『女の階級』;朝鮮戦争期のジェンダーと帝国主義の記述―佐多稲子の場合)
第3部 闘争主体とジェンダー(プロレタリアとしての娼妓表象―賀川豊彦「偶像の支配するところ」/松村喬子「地獄の反逆者」の行為性;残滓としての身体/他者―平林たい子「施療室にて」と「文芸戦線」;闘争の記録を織りなす―佐多稲子「モスリン争議五部作」における女工たちの表象;階級、性、民族のインターセクショナリティによる新しい関係性の回路―中本たか子「東モス第二工場」論)
著者等紹介
飯田祐子[イイダユウコ]
1966年、愛知県生まれ。名古屋大学大学院人文学研究科教授。専攻は日本近現代文学、ジェンダー批評
中谷いずみ[ナカヤイズミ]
1972年、北海道生まれ。二松学舎大学文学部准教授。専攻は日本近現代文学・文化
笹尾佳代[ササオカヨ]
1979年、徳島県生まれ。神戸女学院大学文学部准教授。専攻は日本近現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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田中峰和
冬峰
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