内容説明
ときに人々を魅惑し、ときに宗教的・倫理的な観点から可視化を規制される乳房は、隠蔽されながらも性的な消費の対象になり、時代や社会によって「エロス」「卑猥」「母性」などのさまざまな価値観と結び付けられてきた。社会状況の変革や価値観の揺らぎなどの「時代の危機」に乳房イメージが生産・消費される契機を読み取り、ヨーロッパ中世、近世イタリア、戦中・戦後の日本映画、ピンクリボンキャンペーンなど、古今東西の乳房イメージと社会との関係を明らかにする。それらを通じて、女性の身体そのものから乖離している乳房イメージと、それに密接に絡み合うジェンダーの力学を解明する乳房文化論。
目次
第1章 男/女の差異化―医学的言説における乳房(医学史概略とジェンダー;医学史に見る乳房・乳をめぐる言説―体液としての乳;薬剤としての乳)
第2章 美の威嚇装置(ピンクリボンキャンペーンとは;ピンクリボンキャンペーンの歴史;蓄積される乳房の表象;新たな意味創造の困難;「乳がんではない」美しい身体;表象の裏切り;ピンクリボンキャンペーンをめぐる表象の政治学)
第3章 「聖戦」論理の構築(戦時下日本映画にみる「授乳」のイメージ;銃後映画の「授乳」イメージ;戦地・占領地映画の「授乳」イメージ;満洲移民映画の「授乳」イメージ)
第4章 都市秩序の再生(ペスト危機と乳房イメージ;ペスト図像での乳房イメージ;授乳しない乳房の系譜;都市秩序の再生)
第5章 男性優位のジェンダー秩序の再編/強化(「危機」の時代の/「危機」に抗する日本映画―レイプ表象の生産/消費の背景;「俺たちをケダモノにしたのはお前たちじゃないか」―「劣情有理」とレイプ表象;「あんたも、お嬢さんなんて仮面を早く取ることだな」―「レイプ神話」の定着へ)
著者等紹介
山崎明子[ヤマサキアキコ]
1967年、京都府生まれ。奈良女子大学生活環境学部助教。専攻は視覚文化論、美術制度史、ジェンダー論
黒田加奈子[クロダカナコ]
1974年、群馬県生まれ。千葉大学大学院人文社会科学研究科特別研究員、国立歴史民俗博物館非常勤職員。専攻はイタリア美術史、科学思想表象文化史
池川玲子[イケガワレイコ]
1959年、愛媛県生まれ。実践女子大学ほか非常勤講師。専攻は近代日本女性史、日本映画史
新保淳乃[シンボキヨノ]
1973年、群馬県生まれ。武蔵大学・明治学院大学ほか非常勤講師。専攻はイタリア美術史、ジェンダー表象文化史
千葉慶[チバケイ]
1976年、千葉県生まれ。千葉大学ほか非常勤講師。専攻は近代日本美術史、ジェンダー史、視覚文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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