内容説明
機械翻訳がひらく可能性とそこに潜む問題点をめぐって、文学、哲学、言語学の若手研究者が論究したワークショップの成果。
目次
巻頭言 機械翻訳はバベルの塔を再建するか
序章 機械翻訳をめぐる議論の歴史
第1章 機械翻訳とポライトネス―機械翻訳に反映させるべきポライトネスとその手法に関する一考察
第2章 機械翻訳の限界と人間による翻訳の可能性
第3章 機械翻訳は言語帝国主義を終わらせるのか?―そのしくみから考えてみる
エピローグ コミュニケーションの入口としての機械翻訳
著者等紹介
瀧田寧[タキタヤスシ]
日本大学商学部准教授。日本大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程満期退学。専門:西洋哲学
西島佑[ニシジマユウ]
上智大学総合グローバル学部特別研究員PD。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士後期課程満期退学。専門:政治哲学。主な論文:「「特異点」と「技術」からみる言語と社会の過去と未来―テイヤール・ド・シャルダンの思想をてがかりに」(2015年度テイヤール・ド・シャルダン奨学金・金賞論文、上智大学理工学部・理工学研究所)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yyrn
20
最近の機械翻訳はビジネス文書ではかなり使えるし、携帯機は海外旅行のお供として申し分ないと思うが、このまま進化を続けて近い将来、違和感のない会話ができる日が来るのだろうか?課題はなんだろうか?と興味を持ちながら読んでみた。が、ハッキリ言って言語学者、文学者、政治哲学者の3本の学術論文の部分は正確を期すあまりか注釈的な説明が長く正直読みづらかったが、その論文に対する各専門家からの解説やツッコミ的な問いかけが続き、さらにそれに対して前述の論者が回答するといったやり取りは面白く、素人にも理解できたと思う。でも⇒2019/10/29
タイコウチ
10
気鋭の若手文系研究者(哲学、言語学、文学など)による機械翻訳の未来についての論稿とそれを巡る議論。統計・確率主義によるニューラル機械翻訳(最近のグーグル翻訳など)では、人工知能が仲介言語としての内部言語を構築しているらしい(それがどのようなものか人間には見えない!)。ということは、その先に仲介言語帝国主義とでもいうものの脅威があるというかもしれない。また、機械翻訳には、他者とのコミュニケーションを助けると同時に、他者を自分の母語という「慣れ親しんだ環境」に引きずり込む暴力性をはらんでいるという指摘も重要。2019/11/10
Nobu A
9
数年前に上智大学で実施されたワークショップ「言語の壁がなくなったら:機械翻訳と未来社会」を基にした3本の論文を中心に機械翻訳の変遷とそれを巡っての考察。各論文に対するコメントと筆者の応答が内容に深みを増す。ポライトネス理論の統合化の可能性やGoogle翻訳の実例を用いた「視点/perspective」における日英2言語間のズレ等、興味深い記述がある一方で、ルールベース手法、統計機械翻訳とニューラル翻訳の類型化の差異が説明不足。そこを理解してこそ機械翻訳が具体的にどこまで迫ってきているかが分かるように思う。2021/04/12
でんがん
7
機械翻訳の未来について問題点、限界などについて言語学者、哲学者の視点から考察された本。私もGoogle翻訳には仕事でも長いことお世話になってきましたが、昔と比べて最近は明らかに精度が上がっていると感じており、大変重宝させていただいています。このままいけば完全な機械翻訳ができるのではと思い、期待して本書を手に取ったのですが、そんなに簡単ではないんですね。よく分かりました。2021/05/03
niko
4
学術的な議論だとこのような形になるかと思いますが、翻訳者の立場からいうと、人間と比べてどこが劣ってるかというよりは、企業が今後翻訳にお金を出していくのかどうかという点が一番気になるので、そういう意味では少々物足りなかったです。2019/08/21