内容説明
戦中、戦後、連綿と続けられてきた医療政策や科学技術が、国のほんの一握りの人たちにとって有意義である一方、多くの人びとに多大な被害や被災をもたらすものであった。現在、国民に徹底して「犠牲」を強いる「国策」は、その規模や凶暴性を増して推進されようとしている。原子力兵器・原発、科学技術・先端医療の現代社会における問題点を照射する。
目次
いま深くいのちをみつめる
1 福島原発事故と内部被曝(「低線量」放射線内部被曝と健康障害;若狭湾における反原発の闘い)
2 現代科学技術と先端医療(医療政策としての脳死・尊厳死―私たちはナチスを断罪できるのか;人体部品資源化・商品化のいま;子どもと臓器移植・原発事故・遺伝子診断―国策の犠牲者としての子どもたち;科学技術における「国策」と「犠牲」の連鎖の構図)
3 被爆地・長崎の戦後(長崎の医師・永井隆、秋月辰一郎のことなど―土山秀夫先生に聞く)
補遺 なぜ、いま、「永井隆」を問うのか―『国策と犠牲』を読む
著者等紹介
山口研一郎[ヤマグチケンイチロウ]
1949年生まれ。医師(やまぐちクリニック)。現代医療を考える会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
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「国策によって生ずる犠牲」という観点から、原爆・原発だけでなく、現代医療まで包括的に議論している。▼若狭湾での反原発闘争のくだりは、一地域での勝利は、周辺地域での原発設置という包囲網によって敗北へと転落させられた点を暴き出す。他方、原爆による死者を「貴い犠牲」とした永井隆を批判するのは、敗戦~原子力受容における言説との対応から、非常に意義深い。▼また、脳死者は、生きるに値するかを判定され、死の中に廃棄され、しかし、その身体を資源として活用しようとする動きを剔出していて、現代社会の課題を浮き彫りにしている。2017/06/07