内容説明
この世を越えたもう一つの世界を作品として実現すること。芥川文学はこうした渇望の所産だと言える。だとすれば、作品を丁寧に読み込むことで、自らの理解枠自体を問い返し、通念を越えて実現された世界の内実を補足しようと努めることが必要だろう。そうした努勢から、エロスの全き恢復を求めて模索しながら、エロスの断念へと傾斜していかざるをえなかった芥川文学の道行を追尋する。
目次
第1章 「芋粥」
第2章 「地獄変」
第3章 「奉教人の死」
第4章 「舞踏会」
第5章 「南京の基督」
第6章 「薮の中」
第7章 「六の宮の姫君」