内容説明
一九七三年に創設された中世史研究会は、東海地域を拠点にし、関東・関西の諸学会と並び、日本中世史研究の発展に半世紀にわたって貢献してきた。本書は、創立五〇周年を記念して行われた二年間のシンポジウムの成果である。第1部には、東国とされる地域と西国とされる地域のそれぞれの社会構造はどのように描けるかを論じる諸論考、第2部には都鄙の関係性や相互認識のあり方を論じる諸論考を収め、併せてシンポジウム当日のコメント、討論記録も収録。政治権力論だけでなく、流通経済や文化意識にも目を向け、中世の列島社会の特質に迫る。
目次
第1部 列島東西の社会構造とその変質(鎌倉禅・京都禅・博多禅の間隙;西遷・北遷武家領主と鎌倉期東国武家社会;瀬戸内海流通の構造転換―「陶晴賢安芸厳島掟書写」の再考;織豊期の都市法と諸地域;東西戦国大名の「地域国家」像;戦国期における室町将軍・古河公方の栄典授与と地域性)
第2部 都鄙の連関と相互認識(中世前期の道隆流坊門家と都鄙交流;南北朝期禅僧の関東認識;「東海」地域の成立と京・関東;伊勢神宮地域をめぐる金融・信用と信仰経済―特に都鄙間の“地域性”の視点から;後奈良天皇の諸国への意識―般若心経の奉納を中心に;戦国期宗教勢力の都鄙的世界―本願寺を素材として)