目次
鯉は船に乗って進む
サンタ駆動
篠の目原を行く
御祝儀
なかへと
犬
小さな幻影と大きな幻影を追う
出せ
夜の思い出
薄子色
付け文
おとうさん
家の格子
赤い洋灯の点く歌合わせ
新世界
New World
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南雲吾朗
70
凄まじい文章の連続。そうか…こういう詩もあるのだ。なんと自分は世間知らずだったのだろう…。感想すら書けない、とにかく圧巻である。「ことば」単体がこれほど無限に感じられたのは初めてだ。理解とか解釈とかの次元を超えている。本当に圧倒された読書体験であった。2020/10/01
SIGERU
31
五百人の男が校庭に集まり、蠢いている。彼らはじっとり汗をかき、鉛の香りがする。いかがわしいホテルの一室では、裸の男が熊に襲われて、血を流しながら逃げ回っている(『サンタ駆動』)。この幻視の強度は何だろう?内田百閒にも似ているが、もっと湿り気を帯びて、肉感的な生々しさがある。具象から出発したはずなのに、気がつけば、ぐにゃりと崩れる現実がそこに。トロンプ・ルイユめいた、他世界に誘われる感覚が心地よい。エッセイによれば、マーサ・ナカムラ自身も「異界」を意識しているらしい。萩原朔太郎賞を受賞、鬼才ある若き詩人だ。2022/02/20
ゆう
30
土着的な神仏やそれらを感受するアジア的な感覚(怪異や恐怖を含む)と、時折現出する「映像を映し出す綿入れ」「ホログラム」「宇宙船」といった現代的なガジェット(宇宙船はガジェットか?)が同じレイヤーで並列に表現される奇妙な感覚が面白かった。総じてそれらは強烈な(リアリティを伴った)幻想といった後味を残す。「かか」を読んだばかりなので、若い世代による土着的な信仰と現代的な生活の接着といったムーブメントがあるのだろうか?と思うなど。とても良い。2021/12/19
くさてる
21
うわあ。なんだこれは。圧倒的なイメージの奔流で描かれる、悪夢めいた世界。突拍子もない猥雑さやグロテスクさが目の前にパノラマ上に広がる。そこには論理や物語の救いはないし、読んでいてどんどん置いてけぼりにされていく怖さがある。なのに、全体のイメージは静謐で穏やかだ。理解はできない。でも、惹かれる。そんな世界です。2020/08/01
hiroizm
15
前作「狸の匣」に引き続き読書。前作の日本民話、土着信仰的な要素がやや薄まり、作者独特のマジカルワールド、何か暗示的な夢の世界が全面に出てきた感あり。文体は比較的落ち着いた語り口なのだが、言葉の組み合わせのずれにともなって立ち上がってくる世界像は奇妙な中にもクセになる味がある。「サンタ駆動」「ご祝儀」「薄子色」「おとうさん」が良かった。2021/01/06