内容説明
長い年月、生活を賭けて詩を書き続けてきた著者が、母を施設に預け、勤めを終える人生の局面において、ただひたすらにその足取りを刻む。『明星』より2年ぶりの新詩集。
目次
千年
一夜
秋刀魚
手の鳴るほうへ
草を踏む
幼心
喜望峰
柳河行
この道は
蜜柑色の家〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チェアー
9
詩を書き続け、定年になって、それでも言葉がいとしくて、なおかつ家族もいとしくて。そんな日常のなかに溶けている言葉を浮かび上がらせた。2019/05/22
Cell 44
0
「いつかまた/しあわせのひのくることを/いつかまた/ともにあるひのくることを/おもっていまは/まいりましょう/めぐりくるそのときまでは/こんなけわしいひとのよの/ひとのころもをぬぎすてて/いまはとびたつ/ひとりひとりで」(「寒雀」)かなで編まれた七五調の詩篇とエッセイ風の散文詩によって成る。本当に良い詩集だと思う。変わった語法は何もないが、優しい目の、顔の、紙に触れる手つきの伝わる詩たちだ。過去へ直接的に、ドラマティクに身体の繋がる郷愁。「産土行」など、とても良い。2016/01/20