内容説明
飛んだ破片がガラスのように反射して、これがみんなの朝焼けになるのだと知った―世界と言語を破壊していく暴力と妄想。その静寂のなかを疾駆する少女のまえに、いま夜は明ける―。新たなはじまりを告げる世界への輝かしい賛歌。第44回現代詩手帖賞受賞作品。
目次
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夏のくだもの
足の裏
会話切断ノート
故郷にて死にかける女子
苦行
友達
術後
空走距離
小牛と朝を
見エないという事
死ぬ間際にいう言葉がそれであればいいのに
非妊
尋常
暴走車を追いすぎて、
博愛主義者
死なない
最弱
再会しましょう
きみを呪う
世界
著者等紹介
最果タヒ[サイハテタヒ]
1986年兵庫県神戸市生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おかだ
35
図書館にて。正直に…こういうものを分かったふりをするのも凄いカッコ悪いと思うので。単刀直入に言って、分からなかった。10代の頃に読んでいたら違ったのかな。こういう捉えどころの明確でない言葉を欲する時期ってあると思う。分からない、分からなくてモヤモヤする気持ち、分かりたいと願うような気持ちを味わった。これから先、思春期を迎えた娘とかにこういう感情を抱くんだろうなぁ…と。扱いにくい年頃の子供を前に呆然と立ちすくんだ気分。2017/07/05
Y2K☮
31
2007年刊行。当時の著者は21歳。収録作の多くが吐き出されたのは十代の頃か。「推し、燃ゆ」のような散文ですらギリギリなのに、いまの私が読んで共感とかあり得ない。あるとしたらわかる者と思われたい自己愛。にもかかわらずスルーできない数々の一行。資本主義との付き合い方を学ぶ以前の創作者だけが纏える風の匂い。存分に浸った。成功さえしなければ永遠に。それはでも残酷な真相だろう。誰だって認められたいし、好きなものを創ってお金を稼げたら最高だから。こういう書き手がこういう書き手のままで幸せになる術はあるのかないのか。2024/10/09
Y2K☮
24
パンクでユニセックスな十代の香り。ケータイ小説的なドロドロ恋愛に酔った作風でない点に好感。ただ「死んでしまう系のぼくらに」と比べて書道の二度書きを思わせる無用な装飾が目に付く。心の呟きが荒れ狂う言葉の渦に飲まれて勿体ない。もっと弱いまま純粋に吐き出せばいいのに。とはいえ、やはりクリエイティブな感性をくすぐる新しさ。いい刺激をもらった。恋愛の成就した女の子がどんどん美しくなる様に感性をくすぐられた物書きはもっと創作したくなる。著者の今後が気になる。年相応な作風に変わっていくのかシド・ヴィシャスのままなのか。2015/05/07
ぐうぐう
13
この詩集には、息詰まるような緊迫感がある。多くが10代の頃に書かれた詩で構成されているという、その若さゆえの深刻さがそうさせてはいるのだけれど、しかし最果タヒは、若さという感性を絶対視しているわけではない。暗闇の中で必死に思索し、錯誤を繰り返し、言葉を綴ろうとしている真摯さに胸が締め付けられる。何よりも、闇の中で夜明けをイメージしようとしていることに感動するのだ。そして事実、この詩集の夜は明ける。「グッドモーニング」、それは夜の暗さを知る者だから、そして朝を迎えた者だから、ささやける言葉。2009/07/12
ふじみどり
12
いつしか手の届かないところへ行ってしまった若い日。若い日は終わった。それは乖離して自分自身ではない遠いところでうずくまっているように思えるが、自分自身は数えきれないほどのあのときの自分自身でできている。もちろんその中にあの頃も含まれている。あたりまえのことなのに、若さを失うという言葉に惑わされ、外見の老いに愕然としてしまう。若さは一度経験し得たもので失いようがないもの、時のうつろいも肉体の衰えも手が出せないところ、肌身離さずよりも近くにもっていると思うと安心した。いいことをおしえてもらった。2012/03/15
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