出版社内容情報
部屋と世界が、触れあえぬまま重なるときの、余剰部分
そこで、外皮から朽ちるとして、最後に
わたしくしに、何がひかるか
(「孤影」)
知りえなかった何かに
「『空閑風景』は、海と土の間で残響しか聴こえてこない、堂々たるボレロである」(四万田犬彦)。
泣き者たちとの邂逅を願いつつ、言葉でおのれを擲つこと。極点を照らし出す詩的エクリチュールの達成、
『空閑風景』までの軌跡を一望する。
解説=清岡卓行、横木徳久、野村喜和夫、杉本真維子
齋藤恵美子[サイトウエミコ]
著・文・その他
内容説明
知りえなかった何かに。亡き者たちとの邂逅を願いつつ、言葉でおのれを擲つこと。極点を照らし出す詩的エクリチュールの達成、『空閑風景』までの軌跡を一望する。
目次
詩集“異教徒”から
詩集“緑豆”から
詩集“最後の椅子”全篇
詩集“ラジオと背中”から
詩集“集光点”から
詩集“空閑風景”全篇
散文
作品論・詩人論
著者等紹介
齋藤恵美子[サイトウエミコ]
1960年東京生まれ。聖心女子大学文学部卒。博報堂に7年間勤めた後、書籍編集や高齢者介護の仕事に携わりながら詩作を続ける。1993年第1詩集『異教徒』(思潮社)。05年『最後の椅子』(思潮社、06年・第8回駿河梅花文学賞)。07年『ラジオと背中』(思潮社、07年・第32回地球賞/08年・第58回芸術選奨新人賞)。16年『空閑風景』(思潮社、17年・第47回高見順賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SIGERU
19
吉岡実『僧侶』に衝撃されて詩を書き始め、吉岡を思わせる詩風で注目された詩人、齋藤恵美子。彼女の軌跡と変貌が、この一冊ですべて窺える。中期の『最後の椅子』は、高齢者介護を職とした当時のなまなましい体験が反映された、異色の詩集。「あたしをここから出してちょうだい しがみつかれて立ちすくむ」。だが、老婆が帰るべき家は、もはや思い出の中にしか存在しない。心象風景がせつない詩篇『帰りたい家』は、この時期の集大成だ。その後、硬質の抒情と思弁的な内容が、より高次元に止揚された詩境へと達した彼女の、今後に嘱望したい。2021/09/05