出版社内容情報
大塚英志[オオツカエイジ]
著・文・その他
内容説明
自由であるべき文化生成システムが、企業に隷属させられる時代が到来した。想像力=創造力が管理された世界で、政治や権力が作り出す“大きな物語”に自ら参加する大衆は、どんな「ディストピア」を現出させるのか?まんが、アニメ、文学、宗教など、戦後日本のポップカルチャーの展開を縦横に参照しながら、「メディアミックス」の名に下に進展する危機を浮き彫りにした挑発的講義「東大裏ゼミ」を紙上再現。KADOKAWAとドワンゴの統合発表に際した緊急アピール「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」も収録!
目次
第1章 物語消費というディストピア(「太平記」という“世界”;講談速記本から固有の作者へ;創造行為としての海賊版 ほか)
第2章 オウム真理教とメディアミックス(おたくの騙し方;メディアミックスはプロパガンダに変容しうる;近代の欲望達成の機会均等化要求 ほか)
第3章 三島由紀夫とキャラクター(江戸時代の妖怪はキャラクターか;受け手の側からのキャラクターの発見;「正チャンが成長しないのはなぜか」という疑問 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
69
2014年の大学院講義を書き起こした新書。当時帯の合併が伝えられたことを踏まえて出版されたようだ。角川で仕事をしていた著者の考察や問題定義が触りで、80年台物語消費論やオウム真理教とメディアミックスや、三島由紀夫とキャラクターなどなど。ある程度著者を追っているなら、ほかの本のエッセンスが繰り返されているのが分かる。ただこの本だけで著者を理解するのは難しいと思われる。ファンであるなら。2018/09/03
かなた
7
日本のアニメやマンガなどのコンテンツ産業はメディア展開が無秩序で拡散型。ハリウッドやディズニー、ジブリはメディア展開は映画作品のブランドを補強する形の収束型。コンテンツ産業は複製コストが低いため、予算をかけて最高の作品を作り、全世界にばらまく方法が取られやすい。しかし日本は特殊で、作品だけでは収益が回収できないため、グッズやコラボなど様々なメディアに展開して全体として回収しようとする「ジャンル横断的な小規模連合」。2024/07/18
みみみんみみすてぃ
6
★★★★★ これ、あんまり読まれていないけどけっこう面白いですよ。しかもボリューミーだし。序盤のKADOKAWAとドワンゴの合併の批判論だけでも読む価値があると思います。メディアミックスという最近は当たり前のようになっているこのうんざりしたカルチャー状況の、意外な歴史性を探りだし、さらには三島由紀夫まで論じようという意欲作。大塚英志をおう身としては外せない新書だったと思います。2016/01/28
袖崎いたる
6
誰もが自由に平等に創作ができるのは結構、しかし、不快だ。なぜならそれは楽しむために創作をさせながら不快ではないというシステムにおいて創作させられることであるから。ポストモダン=管理社会は消費者の格率までも管理している。その点に著者を不快にするポイントがあるようだ。 つまり二次創作的システムは本来世界普遍的であるのに、データベースと共にシステムを管理しようとする波濤がKADOKAWAの歴彦的思想によるディストピアなのではないかということらしい。2015/04/22
onaka
5
KADOKAWA、ドワンゴ合併時、大塚さんが発していた批判の根本には、webメディア界隈で今起きている潮流に対する危惧があった。ソーシャルメディア=多元的発話システムが、語りの場を民主化させ、創造性を爆発させる一つの装置として機能するんだ、みたいな単純な楽観論は捨てましよう。人々の創造力を囲い込む場が、大きな物語を生み出す強力なツール(=見えない権力)になっていることに、もっと意識的になるべき。最後の三島由紀夫キャラクター論が、これにどうつながるのかイマイチ理解できなかった。けど、概ね同意だよ。2015/06/04